アンダルサイト(アンダリュサイト)について
【和名・紅柱石(こうちゅうせき)|英語・Andalusite|主要産地・ブラジル】
アンダルサイトとはその色合いの多様性から「多色性の王様」と称される宝石・天然石です。 近年、ビーズ加工されるものが少なくなってきています。当店ではビーズを中心に販売しております。
アンダルサイト(アンダリュサイト)の特徴
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アンダルサイトの名前の由来
「アンダルサイト」という名前は、この天然石がスペインのアンダルシア州で発見されたことからつけられました。赤い柱状の結晶を形作ることから、和名は「紅柱石(こうちゅうせき)」と呼ばれています。
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アンダルサイトの産状
アンダルサイトはペグマタイトや泥質岩に由来する変成岩、特に泥質ホルンフェルス(泥岩が熱によって変質するタイプの接触変成岩)などに生成されます。生成する過程で、マスコバイト(白雲母、しろうんも)に変化することもあります。
アンダルサイトはカイヤナイト(藍晶石、らんしょうせき)やシリマナイト(珪線石、けいせんせき)という鉱物とは同じ成分で構成されていますが、結晶の構造が異なる同質異像(どうしついぞう)という関係にあります。結晶の構造が異なるだけで、色や性質が全く異なった鉱物になるのです。中〜高温で低い圧力の中ではアンダルサイトになりやすく、低温で高い圧力の中ではカイアナイトになりやすいです。また、高温で中〜高い圧力の中ではシリマナイトになりやすくなります。このように温度・圧力の違いによって3種類の鉱物に分かれて成長するので、これらが含まれる岩石が、地下でどのような状態を経て生まれたのかを知ることができる貴重な資料ともなるのです。
アンダルサイトは生成の過程で、コランダムやトルマリン、トパーズなどを共生鉱物として伴うことがあります。
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鮮やかな色の変化を遂げるアンダルサイト
アンダルサイトの最大の特徴は、石を見る方向によって赤、黄、緑など、色が2色〜3色に変化して見える「多色性(プレオクロイズム)」。これは、アンダルサイトの結晶の内部を通った光が、結晶を見る方向によって異なった吸収・反射のされ方をするため、目に飛び込んでくる光の色も変化し、結果として色が変化して見えるのです。あまりにも鮮やかな色の変化を遂げることから、アンダルサイトは「多色性の王様」の異名を持つ天然石としても知られています。アンダルサイトの多色性は、くるくるとダンスを踊るように目まぐるしく色が変化することから「アンダルサイト・ダンス」とも称されます。
アンダルサイトの他に多色性を示すことで有名な天然石には、アイオライト(菫青石、きんせいせき)やゾイサイト(灰簾石、かいれんせき)などです。ゾイサイトは特に「タンザナイト」と呼ばれる青い個体が、青〜紫色の多色性を強く示すことで知られています。
アンダルサイトは、その多色性がとても強く現れるためか、アレキサンドライトなどに見られる「カラーチェンジ」(石を照らす光の種類によって、天然石の色が変化して見える現象)を起こしていると勘違いされ、「ブラジリアン・アレキサンドライト」というフォールスネームで市場に出回ったこともあります。多色性は石を見る角度、カラーチェンジは石を照らす光の種類によってそれぞれ色の変化が引き起こされるので、全く違う現象であることには注意が必要です。
アンダルサイト(アンダリュサイト) 鉱物データ
項目 |
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和名 |
紅柱石 こうちゅうせき |
モース硬度 |
6.5〜7.5 |
結晶 |
斜方晶系 |
成分 |
Al2SiO5 |
比重 |
1.63 |
色 |
赤、褐色、黄、灰緑、暗緑、灰等(角度によって見える色が異なる) |
一般的なトリートメント等 |
無し |
アンダルサイト(アンダリュサイト)の産地
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宝石質のアンダルサイトが産出することで有名なのはブラジルです。他の産地としてはオーストラリア、南アフリカ、スリランカなどが挙げられます。当店では、ブラジルで産出したものを中心に販売しております。
日本でも全国各地で産出され、 特に近畿地方では、三重県の花崗岩質ペグマタイト中に産出したものが有名です。しかしながら、日本においては宝石質のものが産出したという記録は残っていません。
なお、アンダルサイトは700度近くの高温に耐え、温度の影響による体積変化も少ない鉱物であることから、宝石質でないものは耐火レンガの材料に使われています。
アンダルサイト(アンダリュサイト)の価値
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アンダルサイトの価値
アンダルサイトは近年、原石の流通量が大幅に減少し、希少性が急激に上がっている天然石の一つです。そのため、価値も大きく上がっています。特に、色が鮮やかで多色性がはっきりと現れ、クラックやインクルージョンが少なく透明度の高いものはとても価値があります。当店では透明度が高い、宝石質のアンダルサイトを多く取り揃えています。
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アンダルサイトの別の姿
アンダルサイトは最大の特徴である多色性以外にも、さまざまな姿を見せる天然石として知られています。
たとえば、泥質ホルンフェルスなどに生まれたアンダルサイトが、生成の過程で炭素を含むと、結晶の横断面に黒い十字架のような模様が現れることがあります。この状態のアンダルサイトは「キャストライト(空晶石、くうしょうせき)」や「クロスストーン」と呼ばれます。キャストライトはその特徴的な模様から、16世紀のスペインでは魔除けの護符として使われていました。
また、アンダルサイトが生成の過程でマンガンを含むと爽やかなグリーンになることがあります。これを「ビリディン」と呼びます。