スピネルについて
【和名・尖晶石(せんしょうせき)|英語・Spinel|産地・ミャンマー/アフリカ】
スピネルはカラーバリエーションに富んだ石で、中でも現在ブラックスピネルが多く流通するようになり、ますます人気の高まっている天然石です。ブラックスピネルの流通量が増え、安価になっていく一方、レッドスピネルやその他の色合いは希少価値が高まり年々高価になっています。当店ではビーズを中心にカボション、ルース、ブレスレット等を販売しております。
項目 |
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和名 |
尖晶石 せんしょうせき |
モース硬度 |
7.5〜8 |
結晶 |
等軸晶系 |
成分 |
MgAl2O4 |
比重 |
3.58 |
色 |
赤、ピンク、青、紫、緑、オレンジ、黄色等 |
一般的なトリートメント等 |
一部、加熱処理 |
スピネルの産地
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スピネルの数奇な歴史
スピネルは、4大宝石の一つとして名高いルビーと混同されてきたという長い歴史があります。
というのも、ルビーとスピネルは同じ産地で採れることが多く、ルビーと一緒にスピネルが産出するということも珍しくないのです。加えて、昔は組成や成分などで石を見分けるような科学技術はまだ発達しておらず、石の区別は目視に頼っていました。そのため、よく似た色や輝きを持つルビーとスピネルが混同されてしまうのも仕方なかったのです。
特に中央アジア・東南アジアの鉱山では、かつて巨大なスピネルの結晶を多く産出し、これらのスピネルは「バラス・ルビー」と呼ばれ、長い間ルビーとして扱われてきました。
1783年にフランスの鉱物学者であるロメ・ド・リールが、スピネルがルビーではないことを突き止めたことで、初めてスピネルとルビーは別々の宝石として扱われるようになったのです。
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実はスピネルだった「黒太子のルビー」
先述のとおり、スピネルはバラス・ルビーとして扱われ、そのいくつかは王や皇帝の秘蔵財産となっていきました。そのような事例としてもっとも有名なのは、イギリス王室の戴冠式用の王冠に飾られている「黒太子のルビー」です。
黒太子とは、14世紀に起こった百年戦争の前期に活躍したエドワード皇太子を指す言葉です。彼はエドワード3世の長男であり、黒い甲冑をまとって勇敢に戦場を駆け回った騎士であったことから「黒太子」と呼ばれ、人気を博していました。
そんなエドワード皇太子は、スペインのカスティーリャ王ペドロ1世を救ったことで、この王が所有していた140カラットもの巨大な赤い宝石を譲られることになりました。この赤い宝石は、当初は誰もがルビーだと思っていたのですが、後年になってスピネルだったことが判明しました。
この黒太子のルビーは、その後の百年戦争において、ヘンリー5世がこの宝石を取り付けた兜を着用していたといわれています。戦闘の際、兜が叩き割られてしまったのですが、本人の頭と黒太子のルビーは無事だったという逸話が残されています。
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ティムール・ルビー
ルビーとして扱われていたスピネルでもう一つ有名なのは、イギリス王室に保存されている、350カラット以上もある巨大なスピネル「ティムール・ルビー」です。
これは、1370年にティムール帝国を建設したティムールが最初に手に入れたことから、この名がついたとされています。中近東を中心に勢力を広げていったティムールが、1398年にインドのデリーを占拠した時に入手したのだといわれています。
ティムール・ルビーには、後の所有者6人の名前が刻まれていることでも知られています。しかし、きちんと判読できる名前は、「シャー・ジャハーン」、「ナーディル・シャー」の2つのみです。シャー・ジャハーンはタージ・マハルを建設したムガル帝国の5代目皇帝です。ナーディル・シャーはムガル帝国に侵攻したアフシャール朝の部族長です。
このように、数多くの戦の歴史の中をくぐり抜けてきたのがティムール・ルビーなのです。
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スピネルの産地
スピネルの産地として有名なのはミャンマーです。上質なレッドスピネルの産地として、現代でも高い人気を誇っています。
その他のスピネルの産地は、タジキスタンやスリランカ、マダガスカル、タンザニア、ベトナム、アフリカなどです。近年ではタンザニア産のスピネルも人気が高まっています。
当店ではミャンマー産、アフリカ産のスピネルを中心に取り扱っています。
スピネルの価値
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スピネルの価値
ルビーと間違われてきた歴史的背景があるため、美しいビーズやルースがルビーよりもお手頃に手に入りやすいことが人気の一因となっています。
近年では、その希少価値や美しさが認められつつあり、価値も上がってきています。特に、色鮮やかに発色し、クラックやインクルージョンの少ないものが価値を持つとされています。
当店でもルビーに勝るとも劣らない、宝石質のスピネルを数多く取り扱っています。
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アニ・アン・ナト・トゥエとダビデの星
天然のスピネルの一番の特徴は、非常に均整のとれた正八面体の結晶です。まるで人の手によって造られたかのような見事な形から、原石のままアクセサリーにする人も少なくありません。ミャンマーではその美しい形を「アニ・アン・ナト・トゥエ(神によってカットされた石)」と称しています。
スピネルは、自然界では双晶(2つ以上の単結晶が、ある一定の角度で規則性をもって結晶したもの)を成すこともあるのですが、2つの三角形が逆向きに重なるように双晶し、まるで占いに使われる六芒星のように見えることがあります。その特徴的な形は「ダビデの星」とも称され、コレクターの間でも高い人気があるのです。
スピネルのお手入れ
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傷がつかないよう、取扱いに注意
スピネルは傷つきにくさを示すモース硬度が7.5から8と、とても丈夫な天然石です。そのため、スピネルより硬度が低い天然石と一緒にすると、スピネルに傷がついてしまう可能性があります。スピネルを保管する時は、他の石とぶつからないよう、仕切りのある箱や小袋に入れるなどして、個別に保管すると安全です。
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普段のお手入れは空拭きで
スピネルは汗などで劣化しにくい石ですので、普段のお手入れは空拭きで結構です。スピネルのアクセサリーを身につけた後は、乾いた柔らかい布で空拭きをすると、スピネルの美しさを長い間保つことができます。
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汚れが気になる場合は、水で薄めた中性洗剤で洗う
スピネルは水洗いが可能です。少しの汚れなら真水でじゅうぶん汚れが落ちますが、皮脂汚れなどが気になる際は、中性洗剤を垂らしたぬるま湯で優しくもみ洗いします。汚れが落ちたら、洗剤が残らないように水でしっかりとすすぎます。すすいだ後は、乾いた布で水気をよく拭き取ります。
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直射日光には当てない
スピネルは、長時間直射日光に当てると色ムラや退色を起こしてしまう恐れがあります。そのため、直射日光が当たらない場所で保管をしてください。保管する際は、蓋つきの容器に入れておくとよいでしょう。