トルマリン|宝石界に咲き誇る鉱物

トルマリンの多色性

皆さんは「食べられる鉱物」って聞いたことありますか?数年前からSNSで話題になったり、テレビで紹介されたりしているので、見たことがある方もいらっしゃるかと思います。

エメラルドにそっくりな琥珀糖、フローライトにそっくりなマフィンなど、見て楽しい、食べて美味しいお菓子たち…が存在する一方で、食べられないけど美味しそうな鉱物も存在します。その代表格がトルマリンではないでしょうか。

色とりどりのトルマリンを並べると、それはまるでキャンディボックスから飛び出したよう。マルチカラーのキラキラはジューシーで本当に美味しそうなのです。

今回はそんな色の魅力がたっぷりつまったトルマリンを掘り下げますよ!

この記事の内容

トルマリンの産地と名前の意味

トルマリンの歴史

トルマリンは永らく他の宝石と間違えられていたという歴史があります。例えば、グリーントルマリンはエメラルド、ルベライト(赤系のトルマリン)はルビーと混同されていました。

1800年代には科学的な組成が解明され、トルマリンと認識されるようになりましたが、実はこのトルマリン、ひとつの鉱物を指すものではなく、30種類以上の鉱物のグループ名なのです。

そして、多々あるトルマリン・グループのうち、宝石として出回っているもののほとんどは「エルバイト(リシア電気石)」、次に多いのが「リディコータイト」という種になります。トルマリンにはいろいろな宝石名がありますが、こうした名前は、種に関係なく、色によって付けられているのが特徴です。

そもそも「トルマリン」の語源は「混色の石」という意味を持つシンハラ語。エジプトの伝承では、旅する途中で虹を通り抜けた石、それがトルマリンだとも言われています。トルマリンは10月の誕生石ですが、その理由も一説によると10月は木々の葉がカラフルに紅葉する季節だからとのことです。

このようにトルマリンといえばカラフル、レインボーカラー、比類なきカラーレンジ!と、その多色展開を称えられることが多いのですが、トルマリンの魅力は多色というだけでなく、ひとつひとつのカラーがそれぞれに味わい深いところにもあります。

というわけで、続いてはトルマリンの人気なカラーについて見ていきたいと思います。

トルマリンの意味

トルマリンの意味

多くの人々に愛されるトルマリンには、深い意味が込められているとされています。ここでは、トルマリンが持つとされる「癒しと浄化」、「保護と安全」、「心の平穏」という3つの代表的な意味について探求してみましょう。

癒しと浄化

トルマリンは、心身のバランスを整えると言われています。特に、ストレスや疲れが溜まった時、この石はリラクゼーションを促し、気持ちをリフレッシュさせる効果があるとされています。また、新たなスタートを切る際に、過去のネガティブな経験からの浄化やリセットをサポートするとも言われています。

保護と安全

トルマリンには、持ち主をネガティブな影響から守る力があると信じられています。特にブラックトルマリンは、保護の象徴として広く認知されており、外部からのストレスや不安を減少させるのに役立つとされています。日常生活で直面するさまざまなチャレンジから自分を守り、心理的な安定感を提供するとも考えられています。

心の平穏

トルマリンはまた、精神的な平和と心の安定をもたらす石とされています。日々の忙しさや挑戦的な状況の中で、この石は感情的なバランスを保ち、落ち着いた気持ちを維持するのに役立つと言われています。心の平穏を求める人々にとって、トルマリンは大切なサポートを提供します。

トルマリンの効果

トルマリンの効果

トルマリンには、パワーストーンとしてもポジティブな効果があるとされています。その中でも特に注目される4つの効果について詳しく見ていきましょう。

ネガティブエネルギーの除去と保護

トルマリンは、ネガティブなエネルギーを取り除く力があるとされています。特にブラックトルマリンは、持ち主をネガティブな影響から守ると信じられています。日常生活でのストレスや不安から解放され、安心感を得るためのサポートとなることが期待されています。

創造性とインスピレーションの促進

トルマリンは、創造的なエネルギーを刺激し、インスピレーションを促進する効果があるとも言われています。アーティストやクリエイターの間で特に人気があり、新しいアイデアや芸術的な表現を探求する際の助けになると考えられています。

自己理解と成長

トルマリンは、自己発見と個人的な成長をサポートする石としても知られています。自分自身の内面を深く理解することを助け、人生の目標や目的に向かって成長する過程で役立つとされています。

身体的な調和と健康

一部の伝統的な信念では、トルマリンが身体的な調和と健康をサポートするとも言われています。ストレスが身体に与える影響を和らげ、全体的なウェルビーイングを促進すると考えられています。

トルマリンの人気カラー

トルマリンの色について

ルベライト(レッドトルマリン)

赤いトルマリンはルベライトと呼ばれる

マンガン含有のトルマリンは、ピンクやレッド、パープルなど、赤系の色に発色します。中でもルビーの様に鮮やかな赤、クランベリーの様にコクのあるピンキッシュレッドは通称「ルベライト」と呼ばれます。

トルマリンを美しい赤にするマンガンですが、なんとインクルージョンを取り込みやすいという性質も併せ持ってしまっています。とても鮮やかでありながらクラリティの高いルベライトは、大変貴重な存在なのです。

ルベライトは流通量が少ないことでの人気もあるかもしれませんが、やはりなんといってもこの色です。見ていると口の中が甘酸っぱくなります。もしルベライトに味が付いていたとしたら、絶対ベリー系ですよね…

クロムトルマリン(グリーントルマリン)

グリーンのトルマリンについて解説

グリーントルマリンの中でも、クロム(あるいはバナジウム)を含有することでひときわ鮮やかにグリーン発色するものは「クロムトルマリン」と呼ばれています。エメラルドやツァボライトのようにグリーンが満ち満ちている色味を見せてくれます。

ルベライトと違ってインクルージョンが入りやすいということはないので、透明度がバツグンな結晶がたくさんあるところも魅力です。つやつやテリテリのクロムトルマリンは抹茶味かピスタチオ系でしょうか。

カナリートルマリン(イエロートルマリン)

イエローのトルマリンについて解説

マンガンが含まれ、鉄がほぼ入らない環境で育つ、強く発光するかのようなイエロー~ライムグリーンを見せるトルマリンは「カナリー(イエロー)トルマリン」と呼ばれます。カナリーは鳥のカナリアのことです。

トルマリンの中では割と近年の登場で、1983年にアフリカのザンビア共和国で発見されました。ブラウン味を取り除くために加熱処理されることもあります。加熱でグリーン味は取り除かれないので、イエローグリーン/ライムグリーンという絶妙な色相が生まれるのです。

産出量が少ない上、大きな結晶が出てこないので希少石としての人気もありますが、やはりなんといってもこの色。見ているだけで元気が出てくるビビッドな柑橘カラーはカナリートルマリンならではのものですね!

パライバトルマリン

スカイブルーのトルマリン、パライバトルマリンは希少な宝石

1980年代の後半に発見されてから現在も人々を魅了してやまない寒色系トルマリンは発見された場所の名前をもらってパライバトルマリンと呼ばれています。銅とマンガンが含有されることで彩度の高い紫青~緑青~青緑~青、といった色を見せてくれます。

銅がカラー要因となる宝石は大変珍しく、しかも色が素晴らしいということで、大変人気があります。特にそのネオン感は小粒でも遠くから見て「パライバだ!」とわかるほど。英語では「エレクトリックブルー」と呼ばれることもあります。

基本的にはブラジル産のものは色濃く、モザンビークなどのアフリカ産のものは淡目です。宝石の価値としては色がしっかりのっているものの方が高いのですが、アフリカ産の淡いパステルカラーも爽やかなラムネ味を想起させてとてもかわいらしいです。

トルマリン、色の種類

トルマリンの産出について

トルマリンは結晶構造が複雑なので様々な元素が取り込まれやすく、色展開も豊富なのですが、結晶が育つ環境によっては、ひとつの結晶の中に複数の色が入ることもあります。

バイカラートルマリン・パーティカラートルマリン

ひとつの結晶に、2色が確認できればバイカラー、3色以上が確認できればパーティカラーと呼ばれます。

バイカラートルマリンで王道と言えば「ピンク&グリーン」。日本人としては桜の季節や桜餅、お花見団子を想わずにはいられない取り合わせですね。

柱状結晶をいかして細長いバケットカット(レクタングルカット)になることが多いですが、中にはオーバルやラウンドなどにカットされているものもあります。

イエロー/オレンジ系&ピンク系のバイカラーは、まさに桃。「フルーティートルマリン」と呼ばれ、ジュエリーになったりもしています。

ウォーターメロントルマリン

ウォーターメロントルマリンの美しさ

通常、バイカラートルマリンというと長細い結晶の端と端の色が異なるものを指しますが、結晶の中心部と周辺部で色が異なるパターンもあります。赤い結晶が緑色の結晶に囲まれているように育つことから、スイカになぞらえて「ウォーターメロントルマリン」と呼ばれるものです。

そのスイカらしさをいかすべく、結晶をスライス状に「輪切り」された状態で流通することもありますし、カボションカットやローズカットなどぷっくり、ころん、と可愛らしさを強調するように磨き上げられた天然石ビーズなどあります。

注目のトルマリン!シーフォーム&キャンディカラー

トルマリンには様々な色合いが存在する、その多色性の解説

トルマリンの主な産地はブラジルですが、そのほかナイジェリア、マダガスカル、タンザニアなどのアフリカ諸国、スリランカ、パキスタン、などのアジア圏等、世界各地で産出されます。

そんな中、近年トルマリン好きの間で話題に上るのは、アフガニスタン産のトルマリンです。

色濃くインクルージョン多め、というトルマリンのイメージを払拭するアフガニスタン産のトルマリンは、クリアで色も明るめでみずみずしく、そして驚きのテリ具合。

特にブルーグリーン系はその透明度から海や川になぞらえて「シーフォーム」「ラグーン」「ナイルブルー」と様々なコマーシャルネーム(鉱物名や宝石名とはことなる販売用に付けられた名前)のもと、その絶妙な色相で目を楽しませてくれています。

「シーフォーム」は「海の泡」という意味ですが、明るめでブルー味のあるミントカラーはとっても爽やかで、海外でも人気上昇中の色なのです。

明るめの色味をまとめて「キャンディカラー」と呼ぶこともあります。カラフルでテリテリなキャンディカラーは本当に美味しそう。上手に組み合わせて天然石ブレスレットに仕立てれば気分も上がりますね!

トルマリンのモース硬度

トルマリンのモース硬度は7~7.5とされています。モース硬度スケールとは、鉱物の硬さを1から10の範囲で評価する方法で、この硬度レベルはトルマリンが比較的硬い鉱物であることを示しています。

これは日常使用において比較的耐久性があることを意味し、ジュエリーとしても、ハンドメイドアクセサリー素材としても、信頼できる硬度です。

硬い鉱物であっても、トルマリンは衝撃に対しては脆い可能性があるため、他の宝石や硬い物質との直接的な接触を避け、優しく取り扱いましょう。

トルマリンのお手入れ方法など

トルマリンはモース硬度が7~7.5あります。これは宝石の中では比較的面傷に強いといえます。ジュエリーとしても、ハンドメイドアクセサリー素材としても、信頼できる硬度です。

また、トルマリンは、基本的に光による退色などはありません。薬品などにも強いので、無処理の石であれば消毒用のアルコールなども大丈夫です。一部パライバトルマリンなど、含侵処理がされているものなどは避けた方が無難です。

急激な温度の変化や高熱はフラクチャー(割れ目)を生じる可能性があるので要注意です。炎天下の車内に放置などしないよう、気を付けましょう。

お手入れする場合、超音波洗浄やスチームクリーナーの利用はおすすめしないです。ぬるま湯に洗剤を溶かしたもので、ブラシなどを使って、優しく汚れを落とすのがトルマリンに適した方法かと思います。

トルマリンまとめ&基本情報

トルマリンのお手入れ方法について

これまでトルマリンがいかにカラフルでいかに魅力的でいかに美味しそうかを見てきました。

本文では触れませんでしたが、ショールトルマリンという真っ黒なトルマリンや、アクロアイトという無色透明なトルマリンもあります。まさに「ない色はない」と言われるトルマリンの真骨頂です。

色々な色がひとつの結晶に入っているバイカラーやパーティカラーは、色の配分や濃さなどが個性的で、同じものはふたつとないと言われています。自分の好みにぴったりなピースと出会ったら、そのときには迷わず手にしていただけたらな、と思います。

私自身、いつか理想の「ピンク&ブルーなバイカラートルマリン」と出会えるその日まで、日々精進したいと思います!

トルマリンの鉱物データ

英名Tourmaline
和名電気石(でんきせき)
分類珪酸塩鉱物
化学式Na(Li,Al)3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4
ほぼ全色あり
モース硬度7-7.5
劈開性なし~1方向に不完全
屈折率1.624-1.644
偏光複屈折性
分散0.017
多色性色により強い二色性
蛍光性不活性~弱
比重2.9-3.1
誕生石10月
誕生日石1/8, 2/16, 5/27, 6/27, 7/23, 9/15,
9/25, 10/1, 10/10, 10/21, 11/29,
12/8, 12/22, 12/24
(それぞれ異なるトルマリンが設定されています)
結婚記念石1周年:ピンクトルマリン
8周年:パライバトルマリン
11周年:トルマリン
石言葉希望、友情、等 (カラーによっても異なります)
愛称トル、トゥル、トゥルマリン
オンラインストア
トルマリンの素材紹介

トルマリンのアイテム一覧

このコラムで紹介しているトルマリンの天然石アイテムはこちらからご覧いただけます。

表示するURL:https://www.kenkengems.com/?mode=cate&cbid=29783&csid=0

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

KenKenGems Logo image
KenKenGems Logo image

この記事の内容