恋が終わるならせめて夏がいい
カレンダーをめくって9月の文字を目にすると私達は夏の終わりを感じます。その時もしあなたが感傷的になるなら、過ぎ去った夏の体験が影響しているのでしょう。それはもしかしたら冒頭のキャッチコピーのように恋という人もいるかもしれません。人それぞれの夏の想い出の余韻が残る少しセンチメンタルな9月の誕生石は、サファイアとクンツァイトです。
夏の想い出と宝石を直接比べることは出来ませんが、この2つの宝石も古来から現代に至るまで世界中のたくさんの人々に影響を与えています。今回は、そんな夏の思い出と暑さがまだ尾を引く9月の誕生石に選ばれている「サファイア」と「クンツァイト」について解説し、その人気の魅力に迫ってみたいと思います。
9月の誕生石のアイテム一覧
このコラムで紹介している9月の誕生石、サファイア、ラピスラズリの天然石アイテムはこちらからご覧いただけます。
9月の誕生石サファイアとは?
9月の誕生石の代表格はサファイアです。サファイアは、ダイヤモンド・エメラルド・ルビーと共に「4大宝石」に数えられており、古来より特別なものとして扱われてきました。
そんなサファイアは、「コランダム」という鉱物の一種です。宝石の中でも特に人気を誇るルビーも同じコランダムの一種ですが、「レッドサファイア」ではなく、ルビーと呼ばれます。サファイアとは、赤色以外の色をしたコランダムのことです。
・赤色のコランダム=ルビー
・赤色以外のコランダム=サファイア
サファイアには色とりどりのカラーバリエーションがあります。
9月の誕生石、サファイアの魅力
9月の誕生石、サファイアの魅力の一つは既にお伝えした豊富なカラーバリエーションにあります。もし雨上がりの虹をコンセプトにジュエリー作りするならば、サファイアだけで表現することもできるかもしれません。
カラーチェンジサファイアと呼ばれるサファイアも存在します。カラーチェンジサファイアは、照らす光によってその色を変化させます。色の変化は、ブルーからバイオレット、グリーンからブラウン、オレンジからピンクなど個体によってさまざまです。
ファッションブランド「シャネル」の創業者が、かつて「世界で最高の色とは、あなたに似合う色のことだ」と言いましたが、あなたに似合う色の宝石は9月の誕生石であるサファイアの中から見つけることができるのかもしれません。
サファイアのアイテム一覧
このコラムで紹介している9月の誕生石・サファイアの天然石アイテムはこちらからご覧いただけます。
古来の人々にとってのサファイア
現在、地球は球体で宇宙を形成する惑星の一つであると科学的根拠を持って証明されています。しかし、古代ペルシャの人々は、地球は天国の色が反映された巨大なサファイアの上でバランスを取りながら存在していると信じていました。これは神話というよりも、古代の宇宙観です。
科学がまだ発達していない時代に地球や宇宙の在り方を証明するには、人知を超えた力や現象で未知の部分が補われるケースが多く見られます。古代ペルシャでは、それにサファイアが使われたのです。サファイアの上でバランスを取る地球。当時、サファイアがどれほど特別視されていたのかがよく分かります。
古代イスラエル民族の伝説的な父祖アブラハムや第3代の王として知られるソロモン王もサファイアの特別な力を信じて護身符として身につけていたそうです。
9月の誕生石、サファイアの種類
「サファイアブルー」と呼ばれるほど、サファイアには青色のイメージがありますが、前述したようにカラーバリエーションに富んだ宝石です。ピンクサファイア・イエローサファイア・オレンジサファイア・グリーンサファイア・ブラックサファイア、そしてホワイトサファイアまであります。
ではここからは、ブルーサファイヤ・ピンクサファイア・パパラチアサファイアの3つのサファイアに注目してみましょう。
ブルーサファイア
9月の誕生石サファイアの名前の由来はラテン語で青を意味する「Sapphirus」からきていると言われています。日本での和名もその色を表現した「蒼玉/青玉(せいぎょく)」です。
ブルーサファイアの青色は、サファイアが持つ色のなかでも最も代表的な色であり、その色の美しさは空や大地の象徴にもされていました。そんなブルーサファイアの青色にも、濃淡や色味によりさまざまなものがあります。特に貴重で美しい青色は、その特長によって別の名前で呼ばれることもありますが、代表的なものは「ロイヤルブルー」や「コーンフラワーブルー」などです。
ピンクサファイア
印象的なピンクカラーで、可憐さを放つのがピンクサファイアです。先程コランダムが赤に発色したものをルビーであるとお伝えしましたが、その赤が薄く表れたものがピンクサファイアです。そのため最もルビーに近いサファイアとも言えます。
その爽やかで温かみのある色は身に着ける人のみならず、まわりの人の心も癒してくれます。気品・可憐・きらめき、この3つを持つピンクサファイアは、特に女性に人気です。
パパラチアサファイア
パパラチアサファイアとは、先程のピンクサファイアとオレンジ色をしたサファイアの中間色をしたサファイアのことです。オレンジがかったピンク色と表現すると分かりやすいと思いますが、オレンジが強くなるとオレンジサファイアになってしまいます。パパラチアサファイアの最大の特長と魅力は、この絶妙な色加減の美しさです。希少性も高いため、幻の宝石と呼ぶ人もいます。
9月の誕生石、クンツァイトとは?
ここからは、9月のもう一つの誕生石であるクンツァイトを紹介します。
クンツァイトが9月の誕生石として定められたのは、2021年12月20日です。この日、全国宝石卸商協同組合が63年ぶりに日本における誕生石を改定し発表しました。新たに1月から12月の誕生石として加わった宝石は全10種類で、9月の誕生石に新しく選ばれたのがこのクンツァイトです。
クンツァイトは、スポデューメンという鉱物の変種の一つです。色はライラックピンクとも呼ばれる薄く紫がかったピンク色から、無色透明なものまであります。印象的なピンク色は、内包物であるマンガンによる発色です。
ちなみに、スポデューメンは色の違いによって呼び方が異なります。ピンク色をしたスポデューメンが今回紹介するクンツァイト、黄色はトリフェーン、緑色はヒデナイトです。
クンツァイトのアイテム一覧
このコラムで紹介している9月の誕生石・クンツァイトの天然石アイテムはこちらからご覧いただけます。
クンツァイトの名前の由来と歴史
宝石の多くは、歴史が古くがあり、さまざまな伝説や逸話がありますが、このクンツァイトは、とても歴史の浅い新しい宝石です。最初に発見されたのは、1902年のアメリカのカリフォルニア州と言われています。この当時ティファニーの宝石学者だったジョージ・フレデリック・クンツにより、発見されたクンツァイトが新しい宝石であると解明され、名前の由来にもなりました。
そんなクンツァイトには別名もあります。それは「カリフォルニア・アイリス」です。これは、発見場所の地名と色合いがアイリス(日本名アヤメ)という花に似ていることから、そう呼ばれるようになったと言われています。ちなみに、クンツァイトの和名は「リシア輝石」です。
クンツァイトの特長と魅力
クンツァイトの特長の一つは多色性です。多色性とは、見る角度によって異なる色が見える性質のことを指します。クンツァイトの魅力は、この多色性によってピンク色の濃淡が変化したり、個体によっては透明に見えることです。身に着ける人の動きに合わせて色を変えますので、人目を引きつけながら周囲を魅了します。
クンツァイトのもう一つの特長は燐光性です。これは、受けた光を蓄積し暗い場所でも輝き続ける性質のことですが、クンツァイトは紫外線に長時間さらされると退色してしまうデリケートさがあるため、注意する必要もあります。
9月の誕生石 気になる石言葉(宝石言葉)は?
サファイアの石言葉
そんなサファイアの石言葉は「誠実・徳望・慈愛」です。サファイアは品格を感じる宝石ですが、石言葉にもそれが言い表されています。
「誠実」
サファイアのその澄んだ青色は、真実の追求と純粋な心を表しています。サファイアを身に着けることで、嘘や裏切りを避け、信頼関係を築く力を高めると信じられています。誠実であることは、人生のあらゆる場面で重要な要素であり、サファイアはその誠実さをサポートしてくれる存在です。
「徳望」
サファイアには、持つ人の徳望を高める力があるとされています。徳望とは、他者からの尊敬や信頼を意味し、社会的な地位や人間関係を良好に保つために重要な資質です。サファイアは、その持ち主に高い倫理観と品位を与え、周囲からの評価を高める手助けをします。特にリーダーシップを発揮する場面や、大切な決断をする際にサファイアを身に着けることで、より一層の信頼を得ることができるでしょう。
「慈愛」
慈愛とは、他者への深い愛と共感の心を意味します。サファイアは、その美しい輝きで心を穏やかにし、持つ人の心に慈愛を育む力があると信じられています。家族や友人、恋人など、身近な人々との関係をより良くし、思いやりと優しさを持って接することができるようになります。サファイアは、持つ人の心に平和と調和をもたらし、愛に満ちた人生に導いてくれます。
クンツァイトの石言葉
クンツァイトの石言葉は「無償の愛・純粋さ・可憐」です。優しい色合いにぴったりの、かわいらしい石言葉がつけられています。
「無償の愛」
クンツァイトのその優しいピンク色は、見返りを求めない純粋な愛を表現しているようです。クンツァイトを身に着けることで、他者への深い愛と共感の心が育まれると信じられています。恋人や家族、友人に対する無条件の愛を育て、より強い絆を築くためのサポートとなるでしょう。クンツァイトは、心に温かさと優しさをもたらし、愛に満ちた人生を歩むための力となります。
「純粋さ」
クンツァイトには心を浄化し、自分に正直であることを促す力があります。純粋な心で物事を見つめることは、人生の様々な場面で重要な役割を果たし、自己成長を助けます。クンツァイトは、あなたの内なる純粋さを引き出し、周囲との関係をクリアで真実なものにするでしょう。
「可憐」
クンツァイトは、その可憐さも広く認識されています。その繊細で柔らかな色合いは、持つ人の内面の美しさと優雅さを象徴しています。クンツァイトを身に着けることで、女性らしい魅力と優しさが引き立ち、周囲に対して自然な魅力を発揮することができます。クンツァイトは、あなたの内に眠る可憐さを引き出し、より魅力的で自信に満ちた存在へと導いてくれます。
9月の誕生石 パワーストーンとしての効果
サファイアのヒーリング効果
- ストレスを軽減する
- 集中力を高める
- 健康を促進する
- 仕事運・金運アップ
- 感情の高ぶりを抑える
クンツァイトのヒーリング効果
- 心に癒しや安らぎを与える
- 自分を信じて愛する
- 慈悲深い愛情をもたらす
- 自分らしさを引き出す
9月の誕生石 身につける意味
サファイアを身につける意味
サファイアは別名「聖人の石」とも呼ばれています。特別な力を持つと信じられていたサファイアは、枢機卿や司教など聖職者の指輪にも用いられていました。サファイアの指輪をした手で信者に触れることで、誠実さを与え、悩みから救うことができると考えられていたのです。
他にも、サファイアは身に着ける人の心を映すとも言われ、不誠実な人が身に着けると色が変わってしまうという言い伝えまであります。これらはあくまで言い伝えです。ただ、人々が美しいサファイアを好んで選ぶように、もしかしたらサファイアも身に着ける人々を選んでいるのかもしれません。
クンツァイトを身につける意味
「無償の愛」などの石言葉を持ち、パワーストーンとしても好まれているクンツァイトですが、身に着けることで自分自身や他人への愛情が深まり、豊かな心を育んでくれると言われています。
すっきりとした淡いピンク色のクンツァイトは女性にも人気があり、さらに石言葉が「無償の愛」であることから、男性から恋人へ贈る宝石としても最適です。
最後に:受け継がれる宝石
今回は9月の誕生石であるサファイアとクンツァイトについて解説しましたが、最後に9月の誕生日の代表格であるブルーサファイアにまつわるエピソードを紹介したいと思います。
ブルーサファイアと言えば、1981年にイギリスのチャールズ皇太子から故ダイアナ妃へのエンゲージリングとして送られ注目を浴びましたが、その価格は660万円程でオーダーメイドでもありませんでした。このブルーサファイアを、一般的な金銭感覚と照らし合わせると高価であることは間違いありません。しかし、由緒あるイギリス王室の婚約指輪としては物足りないため、一部で物議をかもしたのです。
それからしばらく時が経ち、このブルーサファイアは再び注目を浴びます。故ダイアナ妃の息子であるウィリアム王子が、キャサリン妃にプロポーズした時のエンゲージリングが、このブルーサファイアの指輪だったのです。かつて母が父から受け取り、一度は物議をかもしたブルーサファイアの指輪。それが母から子へ受け継がれて形見となり、そしてエンゲージリングとして再度使われたエピソードです。このエピソードは、宝石の本当の価値を教えてくれる気がします。
「河川敷に転がるただの石ころ」でも特別な想い出を伴えば宝物です。宝石の本当の価値は値札に記載されている数字の大きさでは測れません。
今回は9月の誕生石を紹介しました。サファイアとクンツァイトは素敵な宝石です。手頃な値段のものもありますので、一つ選んで「自分の特別な想い」を込めてみてはいかがでしょうか。
9月の誕生石のアイテム一覧
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