サファイアはルビー、エメラルドと並ぶ三大カラーストーンのひとつであり、ジュエリー界のTOPクラスに君臨している宝石です。
世界の王族をはじめセレブリティー達は、代々受け継がれたサファイアを持ち、名高いハイブランドの宝飾店には溜息がでるような美しいサファイアが並びます。崇高な輝きを放つサファイアを身につけると、心地よい緊張感に包まれ、厳かな気持ちになるのは私だけでしょうか。
夏の戯れから熱も和らぐ9月の誕生石でもあり、冷静な自分を呼び覚ます古くから愛され続けてきた宝石です。そんな憧れのサファイアについて、襟を正してお話ししたいと思います。

サファイアの特徴について
サファイアとルビーは同じ仲間で、コランダムという鉱物からできています。コランダムは硬度が高く摩耗しにくい性質を持つので、腕時計の風防やカメラのレンズの保護ガラス、レコード針、工業用の研磨用途としても使用されています。
純粋なコランダムは無色ですが、様々な微量な成分を含むことでカラーバリエーションの豊富なサファイアになります。コランダムの中に1%以上のクロムが入るとルビーとなり、鉄やチタンなどが入るとサファイアになります。赤色のルビー以外は全てサファイアと呼ばれ、サファイアの色合いは産地によっても違ってきます。
サファイアの色について
サファイアと言えばブルーが印象深いですが、ピンク色や黄色、緑色や紫、無色透明など、実は様々な色のサファイアが存在します。ブルー以外のサファイアは「ファンシーサファイア」と呼ばれています。
無色のカラーレスサファイアは、「ホワイトサファイア」と呼ばれ、ダイヤモンドの代用として使用されることがあります。変色種として「カラーチェンジサファイア」といって、アレキサンドライトのように光を当てると色が変化するものもあり、希少性も高くなります。
サファイアは、多種多様な色目においても、色が強く深く鮮やかな品質のものが好まれる傾向にあります。ここからは、産地によって様々なお色のサファイアを堪能していただきたいと思います。
ブルーサファイア

ブルーサファイアはサファイアの中でも最もポピュラーであり、ビロードの上等な生地のように滑らかなブルーです。サファイアは、ギリシャ語、ラテン語、ヘブライ語で「青」を意味する語源を持ちます。高品質の青いサファイアは、鮮度が高く深く鮮やかです。
ブルーサファイアは鉄とチタンの含有比重によって青の色調が異なり、鉄の比重が高いと色が濃くなり、低いと明るくなります。少し灰色がかった青や、黒に近く暗すぎるもの、色が薄く明るすぎる青、このようなブルーサファイアは価値が低くなります。
ブルーサファイアの原産地は数多いですが、スリランカ、ミャンマー、カシミール、タンザニア、マダガスカル、オーストラリアなどが有名です。最高品質を誇るカシミール産の「カシミールサファイア」は、特別な柔らかい青色を誇る完璧なブルーです。
しかしながら、このカシミールサファイアは今では幻の宝石と言われ、約100年以上前の全盛期に産出された物がオークションなどでお目見えするくらいで、現在は殆ど産出されていません。 やや紫がかった「セイロンブルー」のサファイアも希少で、世界中から高い評価を受けています。
ピンク サファイア

コランダムに1%以上のクロムが入るとルビーになると言いましたが、コランダムに0.1%ほどのクロムが入ると、ピンクサファイアになります。地域によってもその解釈は異なりますが、濃いピンク色から、明るいパープルまでがピンクサファイアの色の範囲です。若い女性に人気で、ヴィヴィットな色合いのサファイアです。
ベトナムやスリランカがピンクサファイアの主な産地で、ピンク色が濃く、透明感のあるものが高く評価されます。ヨーロッパではピンクサファイアは結婚や出会いの石と言われ、結婚指輪にピンクサファイアを選ぶ方が多いそうです。
イエローサファイア

イエローサファイアは、イエローからオレンジ色までのグラデーションを言い、明るい色から深目の暗い色まで存在します。やや橙色がかり華やかな色がのったイエローサファイアは希少であり、「ゴールデンサファイア」と呼ばれています。イエローサファイアは、主にスリランカで産出されます。
パパラチアサファイア

ピンク色とオレンジ色が混ざったような色合いのサファイアを「パパラチアサファイア」と言います。パパラチアサファイアはスリランカやマダガスカルで産出されますが、その量は極めて少なく「ファンシーカラーサファイア」の中でも希少性が最も高く「キング・オブ・サファイア」と言われています。
「パパラチア」とは、スリランカのシンハラ語で「蓮の花」を意味します。蓮の花のように清々しい独特の世界観を持つ美しいお色のサファイアです。
スターサファイア

スターサファイアの「スター効果」とは、ルチルシンクという針状結晶の内包物を持つ宝石を、半球形のカボションカットに研磨し表面に光を当てると、3本の線が交差し星のような六条の光が現れる効果です。
スター効果の出るサファイアの中でも、ブルーサファイアが最も美しく評価が高いです。最高級のスターサファイアは、カボション頂部の中央に交差し、ガードルからガードルまで達し、線上の強さが均一なものです。それは神秘的で吸い込まれるような美しさです。スターサファイアはスリランカ、タンザニア、ミャンマーで産出されますが、地色が深くはっきりとしたスターがでる物は、産出量が少なく希少です。
英国王室に伝わるサファイアのお話

世界中から注目を浴びる英国王室と言えば、ゴージャスなジュエリーの宝庫です。 画像や雑誌に王室のどなたかが映し出されると、洗練された装いは常に注目の的となります。私は、胸元、耳元、指に目が行ってしまいます。身につけているジュエリーが何よりも気になるのです。
さりげない日常にカジュアルに身につけるジュエリー、国賓を迎える晩餐会のゴージャスなジュエリー、公務をこなされている時のエレガントなジュエリー。ミーハーではありますが、どれもこれもうっとりしながら魅了されるのが何よりも大好きなのです。男性女性問わず、宝石好きさんは皆、興味をお持ちではないでしょうか。
現エリザベス女王の高祖母にあたる大英帝国の繁栄を極めたビクトリア女王は、サファイアをとても愛し、サファイアのアクセサリーを沢山保有していたと言います。今でも公務の際にエリザベス女王が胸元につけていらっしゃる有名なサファイアのブローチは、ビクトリア女王から代々受け継がれてきたものだそうです。
ダイアナ妃が結婚祝いにサウジアラビア王室から贈られたサファイアのジュエリーもとても目を惹く美しさでした。一連となったダイヤモンドネックレスの中央に巨大なビルマ産サファイアのペンダントトップがあしらわれ、若きプリンセスをゴージャスに品良く際立たせておりました。

しかしながら、私が一番素敵だと心から感激したのは、ダイアナ妃が婚約指輪としてチャールズ皇太子から贈られた12カラットのセイロンサファイアのリングです。深く鮮やかなブルーサファイアの周りを14粒のダイヤモンドで囲んだもので、初々しいダイアナ妃の美しさとともに、すっかり虜になってしまったものです。
後にこのサファイアは、既製品であったと物議を醸しましたが、ダイアナ妃は大層気に入っていたようで、初めて来日した際も指にサファイアが輝いていた情景は、今でもしっかりこの目に焼き付いております。その後不慮の事故で若くして亡くなられたダイアナ妃、世界中が悲しみにくれました。
それから時が経ち、ウィリアム王子と婚約したキャサリン妃の指には、なんとあのダイアナ妃が身につけていたサファイアのリングが輝いておりました。
当初形見としてウィリアム王子はカルティエの時計を受け取り、ヘンリー王子がサファイアのリングを受け取りましたが、ウィリアム王子がキャサリンとの愛を実らせた時に、ヘンリー王子のサファイアとカルティエの時計を交換し、キャサリン妃に婚約指輪として贈られたのだそうです。
宝石は、そのものがもつ美しい輝きと身につけていた方の人格、生き様、愛情が相まってより一層の魅力を引き立て、価値を上げるのだと思います。
どんなに高価で手が出ない宝石でも、伝統や思い、歴史を刻んだ宝石の価値には及ばないのです。 古くからヨーロッパでは家族から継承したジュエリーを大切に受け継いで次の世代に残していく習慣があります。家族の歴史が深く刻まれた宝石に込められた愛は、永遠に消えることなく温かく見守ってくれるのではないでしょうか。
サファイアの石言葉ついて

サファイアの石言葉は「誠実・慈愛・一途」です。
神聖な力を持つとされるブルーサファイアの慈愛に満ちた輝きは、神の恩寵を受けた石として、聖職者にこそふさわしい「聖なる石」と言われてきました。サファイアは、旧約聖書に何度も登場しています。
神がモーセに授けた十戒の石版はサファイアでできていた、神の足の下にはサファイアに似た敷石があった、サファイアのような玉座の上に神が座っていたなど・・・。
サファイアの価値が非常に高く、いかに大切にされていたかがわかります。サファイアはキリスト教国では敬虔と純粋、誠実の象徴と言われています。宝石には欲望や羨望、恨み、それによって巻き起こる争いなど邪悪が潜みがちですが、サファイアにはそんな曇りは一切ない静かな慈愛を感じます。
苦しみも嘆きも憎しみも、静かにそっと消してくれるサファイアの神聖な輝きを実感していただきたいです。
サファイアの持つ意味

サファイアはその神秘的な輝きで、古くから多くの文化において高く評価されてきました。特に、サファイアが象徴する「知恵」、「守護」、「自己実現」の三つの要素は、人々に深い影響を与えています。
知恵
サファイアは「知恵の石」として広く知られています。持ち主に明晰な思考と洞察力をもたらし、真実を見極める能力を高めるとされています。特に、難しい決断を迫られた時や混乱している時に、冷静かつ賢明な選択をするためのサポートとなるでしょう。
守護
サファイアには強力な「守護の力」があるとも言われています。この石は、ネガティブなエネルギーや不運から持ち主を保護し、心の安定をもたらすとされています。また、悪霊や邪悪な力から身を守るための護符としても使用されてきました。
自己実現
「自己実現の石」としても知られています。個人の内面的な強さを引き出し、自分自身の潜在能力を最大限に発揮する手助けをします。また、目標達成や夢の実現に向けての努力をサポートし、持ち主に自信と勇気を与える石です。
サファイアのパワーストーンとしての効果

サファイアは、パワーストーンとしても多くの人々に愛されています。サファイアが持つとされる効果の中で、ストレスを軽減する効果、集中力を高める効果、そして健康を促進するという三つパワーをご紹介します。
ストレスを軽減する効果
ストレスや不安を和らげる効果があるとされています。心の平穏をもたらし、精神的なバランスを整えるパワーを持っています。また、心の落ち着きを取り戻し、日常生活におけるストレスから解放されることで、穏やかな気持ちを保つことができます。
集中力を高める効果
サファイアは集中力を高める効果も持ち合わせています。精神をクリアにし、目標に向かって効率的に取り組むための集中力を向上させると言われています。学業や仕事、クリエイティブな活動など、集中力が必要な場面でのサポートとしておすすめの石です。
健康を促進する効果
さらに、サファイアは身体的な健康を促進する効果もあると信じられています。身体の自己治癒力を高め、体調を整えると言われています。免疫力の向上や、健康上の問題を軽減する効果も期待できます。
サファイアを使用したワンランク上のハンドメイドアクセサリー

なんだかちょっとサファイアって敷居が高すぎじゃない?と思わせてしまったかもしれませんが、そのようなことはありません。近年新たな鉱山が発見され、加熱などの処理技術が向上したことから、比較的お求め安い価格のサファイアが流通されるようになりました。
ハンドメイド作家さんにとっても、ワンランク上のハンドメイドジュエリーとして、サファイアを使用してみるのをお勧めします。丸玉のビーズや、表面がカットされたサファイアのキラキラのボタンカットビーズ、愛らしいピンクサファイアのオーバルカットのビーズなど、見ていてもウキウキしてきませんか?
天然石ブレスレットとしては、あまり見かけないサファイアの丸玉を繋げたブレスレットは、美しすぎてスペシャル感満載です。きっと注目されると思います。また、ファンシーカラーサファイアのグラデーションネックレスなんてとってもラグジュアリーではありませんか。手が出ないような希少で高品質なサファイアから、少し頑張れば身につけることができるサファイアまで幅広くお楽しみいただけるのです。
特に敏感な女性達との女子会の席では、サファイアを身につけたあなたと、サファイアが放つ美しさに目を奪われ、皆さん心が揺らめいてしまうはずです。サファイアの慈愛に満ちた輝きをハンドメイドジュエリーで是非実感していただきたいです。
サファイアのモース硬度
サファイアはその美しさとともに、耐久性も持ち合わせています。モース硬度は9と非常に高く、宝石の中でダイヤモンドに次いで硬いことで知られています。日常生活で安心して身につけられることから、サファイアが持つ高い硬度はジュエリーとしての人気の一因でもあります。
サファイアの取り扱い上の注意
- 洗浄:ぬるま湯や石鹸水と柔らかいブラシを使用して洗浄することができます。表面の汚れや油を優しく取り除き、その後は水できれいにすすぎましょう。
- 化学薬品を避ける:化学薬品や強い洗剤の使用は避けましょう。石の光沢を失う可能性があります。
- 衝撃から守る:モース硬度が高くとも、強い衝撃を受けると傷がつきますので注意しましょう。
- 保管:使用していないときは、他の宝石と接触しないように別々に保管することが望ましいです。柔らかい布や宝石用の袋が適しています。
サファイアについて まとめ
オスカーワイルドの作品の一つに「幸福の王子」があります。誰もが読んだ事のある童話だと思います。私にとってサファイアを語る上で外せない作品であります。
純金を貼りめぐらされた王子の像の目はサファイアでできています。羽を休めに来たツバメに自分の身体の宝石や金箔を町の貧しい人々に届けるように命じます。
剣のルビーや身体の金箔もはがされ、サファイアの目もくりぬかれ、鉛の心臓だけになってしまった王子の傍らでツバメも死んでしまいます。町の人達は救われたものの、汚くなった王子の像を見て・・・。(続きはご確認くださいね)
見返りを求めない無償の愛の美しさは、まさしくサファイアの聖なる輝きではないでしょうか。よこしまな邪念につまずいてばかりいる毎日ですが、サファイアを身につける時は不思議なことに身が引き締まり、心が澄んだような気持ちになれるのは、単純な性格ゆえの錯覚でしょうか。
私にとってサファイアは崇高な世界へと導いてくれる道標なのです。
サファイアの鉱物データ
英名 | Sapphire(Corundum) |
和名 | 蒼玉、青玉(せいぎょく)/鋼玉(コランダム) |
分類 | 酸化鉱物 |
化学式 | Al2O3 |
色 | 青、緑、黒、桃、黄、橙、無、褐色 |
モース硬度 | 9 |
劈開性 | - |
屈折率 | 1.76-1.77 |
結晶系 | 三方晶系 |
断口 | 貝殻状 - 凹凸状 |
条痕 | 白色 |
比重 | 4.00 |
光沢 | ガラス状光沢 |
石言葉 | 誠実 |
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