
とても身近な宝石のひとつである真珠(パール)。
真珠のジュエリーは家に一つはある、という方も多いのではないでしょうか。宝石としての長い歴史を持ちつつも、老若男女問わず人気があり、詳しくご存じの方も多いことでしょう。これ知らなかったな、なんて情報もお届けしていけたらと思います。
真珠の特徴、なりたち

真珠とは、貝の体内で出来る宝石です。
デフォルメされた貝がらの中に真珠が輝くイラストなどで見たことがあるかと思います。
あんなイメージですね。少し詳しく説明すると、そもそも貝は自分で貝がらを作って中の柔らかい体を守っています。この貝がらを作り出すのは、外套膜と呼ばれる薄い膜で、普段は柔らかい体を覆っています。感覚としては硬い貝がらと柔らかい本体の間にあります。貝がらを作るほかに、呼吸をしたり、エサを取り込んだりするための海水の量を調節したりもします。
天然真珠はこの外套膜が貝の体内に偶然入り込むことで形成されます。例えば水中の小さな生物や砂などの異物が貝の中に入ってきたとします。その刺激で外套膜が破れ、その膜のかけらと異物が一緒に中に入ってきます。そうなると膜のかけらは異物から本体を守ろうと膜を拡げます。
これが真珠袋と言われるもので、異物の周りに貝がらと同じものを作り出します。いつも外側で作っている貝がらをたまたま内側で作ることになり、これが真珠となるのです。つまり真珠は貝がらとほぼ同じ成り立ちなのですね。外側でしていることが内側で起こると思うと当然の結果かもしれませんが、とても神秘的です。
しかも、貝がらを作れる軟体動物であるならなんでも真珠を作り出せる可能性があるとのこと。本当に興味深いですよね。この過程が自然に起こることで出来るのが天然真珠で、人の手が入ると養殖真珠となります。この2つの違いはいくつかありますが、大きなもので構造と稀少性の違いが挙げられます。
養殖真珠は核となるものと膜のかけらを人工的に入れ込んで、核の周りにある程度真珠層が形成されたら取り出すことが出来ます。核は真円のものを入れるので出来上がる真珠も真円になります。
また、元々ある程度質量のある核を取り巻くので短期間で美しい真珠が出来ます。これが日本が世界に誇るジャパンクオリティの養殖真珠となります。
一方、天然真珠は自然に入りこんだ小さな異物が核となってゆっくりと真珠層が形成されます。中の中まで全部ぎっしり真珠ということです。核はいろいろな形があるので、天然で真円の真珠はめったにありません。しかも天然真珠は形成に非常に時間がかかるのと採取の難しさから産出量が少なく、稀少価値が高くなります。
どちらにも長所と短所がありますが、どちらがより優れているということはありません。養殖真珠はきっかけとして人の手が入っているというだけで、真珠のできる過程は天然ものと同じなので、その価値は同等と言えます。
また、安定して沢山の量を供給できるということは産業として重要だと思いますので、それも評価出来る点なのではないでしょうか。
真珠の主な産地
真珠の産地は世界中にあります。我らが日本をはじめ、アラビア湾、南インド洋、南米沖、中国南部と北東部の海洋などが有名です。
日本国内では、三重県の伊勢・志摩、愛媛県の宇和島、長崎県の壱岐・対馬の3ヶ所が、いわゆる三大生産地と呼ばれる有名産地です。お持ちの方も多いのではないでしょうか?今や世界中から求められる日本産の真珠ですね。誇らしい限りです。
真珠の歴史、言い伝え

世界最古と言われる宝石はいくつも耳にしますが、真珠も間違いなくそのうちの一つです。古代メソポタミア時代の紀元前3500年頃から存在していたことが当時の遺跡から分かっています。ちなみに養殖真珠は1900年以降に日本で確立された為、それ以前の真珠はほとんどが天然ものということになります。昔も今と変わらず採取困難で稀少価値が高かったため、それこそ王侯貴族たちの宝石でした。
真珠にまつわる伝説や言い伝えを挙げると枚挙にいとまがありませんが、真珠らしい華やかなものをご紹介します。
古代エジプト最後のファラオ・クレオパトラ。彼女は自身のグリーンアイズになぞらえてエメラルドをこよなく愛していましたが、真珠もお気に入りでした。様々な大きさ、形、艶めきの真珠をコレクションしていたそうです。
ある時彼女は、ローマ将軍アントニウスを招いた宴席で、贅を尽くした宴に慣れている将軍に対し、今まで見たことのないような宴を披露すると約束しました。宴はいつもの雰囲気で進んでいき、将軍がいつもと同じではないかと思い始めた時、クレオパトラがおもむろにワインビネガーの入ったグラスに耳飾りの真珠をためらいもなく入れて溶かし、さらにはそれを飲んでしまったという伝説があります。見たこともないような催しを披露するということだったのですね。
この真珠は当時、一国が買えるくらいの価値があると言われていました。この有名なエピソードは、実は真珠が溶けるくらいの濃度のお酢となると一般にはまず手に入らないため、後世の作り話だよ、ということまでセットでご存じの方が多いと思います。
でも私としては、この逸話に真珠が登場したこと自体、真珠が昔から宝石として注目され愛されてきたと実感できるので、とても素敵だと思っています。古く偉大な宝石には様々な伝説や逸話があって、それらの真偽はともかくも、宝石をよりいっそう彩る要素になるのです。それを素直に楽しむことも宝石を愛でる一興なのではないでしょうか。
真珠の種類
淡水真珠

イケチョウ貝やカラス貝など、淡水生の貝からできる真珠を淡水真珠といいます。
ポテト型やライス型、ドロップ形など、真円の形をしていないものも多い点が特徴で、一つとして同じものがない個性豊かな真珠です。特に、大きめでともすると歪にも見えるバロックパールには何とも言えない魅力があります。個性的な曲線を描いて、見る角度にとって全く異なる表情を見せてくれます。
また、色味についてもホワイトはもちろん、オレンジ、ピンク、パープルなど種類豊富です。真円のあこや真珠などが持たない独特の輝きと照りを感じることができる美しい真珠です。
ケシパール

淡水真珠と似ていますが、成り立ちに違いがあります。
養殖中に砂などの異物を取り込んでそれを核としてできる真珠で、人工核を持たない小粒な真珠です。養殖と天然のあいのこのような感じでしょうか。形や大きさも様々ですが、強いて言うと淡水真珠よりもやや鋭く複雑なラインを持つものが多い印象です。
細やかなラインのくぼみに現れる陰影は神秘的で、陽が当たるとがらりと違う表情を表します。これこそが真珠の醍醐味であると、唯一無二の魅力を堪能できます。
あこや真珠
最も代表的な真珠で、いわゆる「真珠」と言われて思い浮かべるものですね。あこや貝から作られ、現在日本で養殖されるほとんどの真珠がこれになります。真円なものが多く、色味もピンク系、グリーン系、ゴールド系と様々です。
白蝶真珠
白蝶貝という貝から採れる真珠です。
グレーがかったものと黄金がかったものと2種類あり、それぞれ採れる地域が異なります。前者はオーストラリア海域、後者はインドネシアやフィリピン海域で採れます。気品あふれるたたずまいが美しい特徴です。
黒蝶真珠
黒蝶貝という貝から採れる真珠です。
フレンチポリネシアのタヒチ産、「タヒチ真珠・南洋真珠」と呼ばれるものが代表的で、緑や赤色の要素も見える神秘的な黒真珠です。真珠貝の中でも活動的で、貝の中で真珠が回転してサークルを巻いたものやバロック型も多く見られるそうです。こういうことを聞くと、あくまでも動物から生まれる自然物なんだなぁと不思議な気持ちになりますね。

真珠(パール)のアイテム一覧
このコラムで紹介している真珠(パール)の天然石アイテムはこちらからご覧いただけます。
真珠は6月の誕生石

6月の誕生石としてもメジャーな真珠です。健康や長寿の石言葉からも贈り物として選ばれやすく、人気があります。また冠婚葬祭でオールマイティに使える点も良いですよね。おめでたい席で使える宝石はたくさんありますが、悲しみの席で使える宝石は真珠くらいしかありません。神秘的でありながら懐の深い魅力的な宝石ですよね。
真珠のパワーストーンとしての効果

心に平穏と癒しを与える効果
真珠は心に平穏と癒しをもたらします。私自身、忙しい一日を終えて真珠のネックレスを手にすると、その滑らかな輝きが心を落ち着かせてくれることを感じます。真珠は、その穏やかなエネルギーで、心の動揺を鎮め、内面の平和を取り戻す手助けをしてくれるのです。ストレスや不安がつのる瞬間に、真珠のジュエリーを身につけることで、心がほっと息をつくような感覚に包まれます。
自己表現を向上する効果
次に、真珠は自己表現を向上させる効果があります。真珠を身につけると、その優美さが自信を与え、自己表現の力を高めてくれます。これはまるで、真珠が内面から溢れる美しさや個性を引き出してくれるようなもの。私たちは真珠の力を借りて、自分自身をより良く表現することができるのです。例えば重要な会議やプレゼンテーションの際、真珠のアクセサリーが自信と落ち着きを与えてくれるでしょう。
浄化の効果
最後に、真珠には強力な浄化の効果があります。真珠は周囲のネガティブなエネルギーを吸収し、浄化する力を持っていると言われています。日常生活で感じるストレスやマイナスの感情を、真珠が静かに洗い流してくれるのです。この浄化作用は、心だけでなく、身体的な疲れや緊張感にも良い影響をもたらします。真珠の持つ清らかで穏やかなエネルギーが、私たちの心身をリフレッシュし、新たな活力を与えてくれるのです。
真珠の持つ意味

時を超え、文化を越えて愛され続ける真珠には、素敵な意味があるのをご存じでしょうか。
純粋と清らかさ
海の奥深く、静かに息づく牡蠣の中で、偶然入り込んだ砂粒が、時間をかけて美しい宝石へと変わります。この驚くべき変容は、純粋な始まりから成長を遂げ、美しさを手に入れる過程を象徴しています。真珠の滑らかで光沢のある表面は、清らかさと純粋さの究極の表現と言えるでしょう。
富と豊かさ
かつて王侯貴族は、真珠を身につけることで自らの富と地位を示しました。真珠はその稀少性と美しさから「海の宝石」と讃えられ、持つ者に富と繁栄をもたらすとされてきました。今もなおその価値は受け継がれ、真珠を身につける人々に特別な豊かさを感じさせてくれます。
知恵の象徴
さらに、真珠は知恵の象徴として知られています。真珠が持つ深い輝きは、身につける人の知恵や知識を反映していると言われているのです。昔から、真珠はその持ち主に洞察力と判断力を授け、正しい道を照らす灯台のような存在であると考えられてきました。知恵とは、外面の美しさだけでなく、内面の豊かさをも意味します。真珠は、この内面の輝きを外に映し出す、まさに知恵の化身と言えるでしょう。
真珠の石言葉

真珠の石言葉は「健康」「長寿」「無垢な愛」です。
「健康」を象徴する真珠。その優しく穏やかな輝きは、見るだけで心を落ち着かせ、精神的な安定をもたらします。私たちが日々直面するストレスや疲れは、心だけでなく体にも影響を及ぼします。真珠を身につけることで、その癒やしの力が心身の健康を支え、リフレッシュする手助けをしてくれるのです。
また、「長寿」の象徴でもあります。真珠の成長過程は時間を要し、その過程で形成される輝きは長く持続します。これは、長い人生を通じて輝き続ける私たち自身の姿を映し出しています。真珠が時の流れに負けずに美しさを保つように、私たちもまた、年を重ねるごとに内面の豊かさと知恵を深め、生きる喜びを見出していくのです。真珠は私たちに、年齢を重ねることの美しさと価値を教えてくれます。
そして、心温まる石言葉「無垢な愛」。真珠の純粋で清らかな美しさは、無垢で純粋な愛の象徴とされています。愛は時に複雑で、困難を伴うこともありますが、真珠はそのシンプルで美しい姿で愛の本質を思い出させてくれます。それは条件なしで与えられる愛、心からの思いやり、そして純粋な情熱。真珠を身につけるとき、私たちはこの無垢な愛を胸に刻み、大切な人々との絆を深めることができるのです。「人魚の涙」や「月のしずく」などどこか幻想的で女性的な例えをされることも、純粋さや無垢さを連想させてきたのだと思います。
真珠のモース硬度

真珠のモース硬度は2.5から4.5と低く、傷つきやすい性質を持っています。真珠の輝きと優雅さは私たちを魅了し続けますが、その繊細さゆえに取り扱いには注意が必要なのです。
また、真珠の美しさを長く保つためには適切なケアとメンテナンスが必要です。まず、真珠は酸やアルカリに弱いため、化粧品や香水、ヘアスプレーなどが直接つかないようにしましょう。また、真珠は長時間直射日光にさらされると色あせする可能性があるため、保管時は柔らかい布で包み、直射日光の当たらない場所に置くことが大切です。
真珠を着用した後は、柔らかい布で優しく拭き取り、汗や汚れを落としてください。
真珠のモース硬度の低さは、その繊細さと美しさの証でもあります。繊細で美しい真珠を大切に扱い、長く楽しむためには心を込めたケアをしてあげたいですね。
真珠について まとめ
真珠は唯一、生きた生物によって作られる宝石です。この成り立ちもまた、真珠の特別な魅力だと思いませんか?まるで海の深淵から生まれた魔法のように、真珠は我々の心を捉え魅了するのです。
真珠は私たちにとってただのアクセサリーを超え、身につけることで自然の美しさを讃え、人生を豊かにしてくれるアイテムと言っても過言ではありません。
最後に、真珠の魅力は永遠です。流行に左右されることなく、世代を超えて愛され続ける真珠は、あなたの日常に特別な輝きをもたらします。それは、時間を超越した美しさの証です。真珠を身につけるとき、私たちはその歴史、美しさ、そして魔法を身に纏うのです。あなたも、この不変の魅力を体験してみてはいかがでしょうか。
表示するURL:https://www.kenkengems.com/?mode=cate&cbid=19853&csid=0