
天然石の中には、時に人の想像を軽々と超えてしまうような神秘的な効果を持つものがあります。中でも「ムーンストーン」は、表面に「シラー」と呼ばれる不思議な光が浮かび上がり、まさに月そのものといっても過言ではない美しさを誇ります。
ムーンストーンはその美しさやお手入れの簡単さから、ハンドメイドアクセサリーとして高い人気を集めています。今回は、そんなムーンストーンの光の秘密や石言葉などについてお伝えし、その魅力を発信していきたいと思います。
ムーンストーンの特徴

ムーンストーンとは
ムーンストーンとは、鉱物的には「フェルドスパー(長石、ちょうせき)」の一種です。フェルドスパーは地球上でもっとも多く存在している鉱物であり、ほとんどの岩石に含まれます。
ムーンストーンはそんなフェルドスパーの中でも、プラジオクレース(斜長石、しゃちょうせき)に属する石です。アノーサイト(灰長石、かいちょうせき)とアルバイト(曹長石、そうちょうせき)の2つの鉱物の成分を持つプラジオクレースであり、和名は「曹灰長石(そうかいちょうせき)」と呼ばれます。
その中でも「シラー」と呼ばれる光の効果を持つものがムーンストーンと呼ばれ、それ以外の色のものはラブラドライトと呼ばれます。他にも、オーソクレース(正長石、せいちょうせき)の中でもアルバイトを含み、シラーを持つものをムーンストーンと呼ぶこともあります。
月の光のような神秘的な輝きは、紀元前1世紀頃から知られており、かつてはギリシャ語で「月」を意味する「セレネー」と呼ばれていました。日本では、パール(真珠)と並んで6月の誕生石に指定されています。
ムーンストーンの「シラー」効果
ムーンストーンのもっとも大きな特徴は「シラー」と呼ばれる、石の表面にぼんやりと浮かび上がる柔らかな光の効果です。この効果は、英語では「シーン」とも呼ばれます。
夜空に浮かび上がる月を写し取ったかのような神秘的な光は、かつて月の満ち欠けに呼応して輝いているのだと信じられていました。シラーが起こる秘密はムーンストーンの構造にあります。
ムーンストーンは、アノーサイトとアルバイトの薄い層が交互に重なっている構造をしています。その構造に光が当たると「光の干渉」という現象が起き、反射された光がさまざまな色に変化して目に飛び込んできます。これにより、石の表面に地色とは違う色の光が浮かんで見えるのです。
ムーンストーンの産地と種類

ムーンストーンの産地
宝石質のムーンストーンが採れる主な産地はタンザニア、スリランカ、インドなどです。ムーンストーンは、その色味や成分によってさまざまな種類があります。ここでは、ムーンストーンの種類の一例をご紹介いたします。
レインボームーンストーン・ブルームーンストーン(ホワイトラブラドライト)

プラジオクレース(斜長石)の一種で、シラーを示す鉱物を指します。宝石としての別名は「ラブラドライト」となりますが、その中でも地色が白いものになるため「ホワイトラブラドライト」と呼ばれることもあります。
石の中に含まれている成分によってシラーの色が異なり、名称も変わります。多数の色のシラーを放つものはレインボームーンストーン、青いシラーを放つものはブルームーンストーンと呼ばれます。
ロイヤルブルームーンストーン(ペリステライト)

アルバイトとオリゴクレース(灰曹長石、はいそうちょうせき)の2つの鉱物の成分を持つ「ペリステライト」という石のことを指します。
ペリステライトとは、ギリシャ語で鳩を意味する「peristera」が名前の由来です。鳩が首を動かした時に、首が青く光る様子がこの石の輝きに似ていることから名付けられました。
その輝きは、ブルームーンストーン(ホワイトラブラドライト)とたいへんよく似ているのですが、鉱物としては別のものとなります。ブルームーンストーンよりも透明度が高く、はっきりとしたブルーのシラーを放つため、ロイヤルブルーという名前が付けられています。また、ロイヤルブルームーンストーンのシラー効果は、鉱物名から「ペリステリズム」とも呼ばれます。
ムーンストーンの石言葉と効果

ムーンストーンの石言葉
ムーンストーンの石言葉は諸説ありますが、例としては「健康」「幸運」「恋の予感」などが挙げられます。月を連想させる優しい光は、持つ人の体の調子を整えたり、幸運と出会うきっかけをもたらしてくれます。
ムーンストーンのパワーストーンとしての効果
月のエネルギーを受容するムーンストーンは、思考を柔軟にし、感受性や直感力などの感性を高める効果があるとされています。同時に「聞く」能力を高め、不要な衝突も防いでくれます。
ムーンストーンは、第六感を刺激し感性を高める力もあるとされ、自分の中にまだ眠っている可能性を引き出してくれます。また、月は女性のシンボルでもあるため、女性性(にょしょうせい)をサポートする石としても知られています。
特に恋愛に関しての意味が強く「恋人たちの石」と呼ばれるムーンストーンは、遠距離恋愛のお守りとして効果があるとされています。中世ヨーロッパでは、恋人たちが互いにムーンストーンを贈り、愛を深めるという風習もありました。
ムーンストーンと相性のいい天然石
パワーストーンとしての効果を期待したい場合、用途によっては他の天然石を組み合わせることで、ムーンストーンの持つ力をより引き出すことができます。ここでは、ムーンストーンとの組み合わせにおすすめの天然石をご紹介いたします。
たとえば、恋愛運を高めたい場合はローズクォーツと組み合わせるとよいでしょう。ムーンストーンとはお互いに恋愛の運気が高い石なので、両者の力を高めあってくれます。
ラピスラズリとの組み合わせでは、恋愛運や仕事運、金運など、総合的な運気が高まり、アメジストと組み合わせると、恋愛運、癒し運を高めてくれます。また、同じフェルドスパー同士であるラブラドライトもムーンストーンと相性のいい石で、癒し運や仕事運を高めてくれます。
ムーンストーンの持つ意味

ムーンストーンには、その神秘的な輝きにぴったりの意味があります。
新しい始まり
人生の新たな章を迎えるとき、ムーンストーンはそっと背中を押してくれます。変化の時期に、前向きなエネルギーを与え、新しい道を開く手助けをしてくれる石です。ムーンストーンを身につけることで、新しい目標や夢に向かって進むための勇気やインスピレーションが湧き、不安や迷いを払いのける力があるとされています。
愛と絆
ムーンストーンは、愛情と絆を深める石としても知られています。恋人たちの関係をより強いものにしてくれるでしょう。互いへの理解と共感を高めることで、より深い感情的な結びつきを生み出す意味を持っています。
安らぎと平和
心に安らぎをもたらすムーンストーンには、ストレスや不安を和らげるという意味があります。特に睡眠の質を向上させると言われ、夢の内容を明確にし、心の深い部分への理解を深めることができます。日々の生活において、静かな安らぎを与えてくれる石です。
ハンドメイドアクセサリーとしてのムーンストーン

ムーンストーンはその神秘的な輝きから、多くの職人たちに愛されてきました。アール・ヌーヴォー時代のジュエリーデザイナーたちはこぞってムーンストーンを題材にしたジュエリーを作成しました。
また、20世紀になるとフラワーチャイルド(ヒッピー)やニューエイジムーブメントのデザイナーにも注目され、ムーンストーンは活躍の場をますます広げていきました。
ハンドメイドアクセサリーとしてのムーンストーンは、落ち着いた輝きを放つため、どんなコーディネートにも合わせやすい石です。たとえば、大ぶりのルースを使ったネックレスは、Tシャツやデニムなど、シンプルでカジュアルなコーディネートのワンポイントになってくれるでしょう。
また、シルバーを使った繊細なペンダントや一粒ピアスは、フォーマルなコーディネートにも上品な印象を添えてくれます。パワーストーンとして利用したい場合は、相性のいい天然石ビーズと組み合わせたブレスレットなどを作るとよいでしょう。
ムーンストーンのモース硬度

ムーンストーンは、傷つきにくさを示す硬度が6~6.5とやや柔らかい天然石であるため、クォーツやトパーズ、ルビーやサファイアなどムーンストーンよりも硬度が高い石とぶつけると、ムーンストーンに傷がついてしまう可能性があります。そのため、仕切りのある箱や小袋に入れるなどして、個別に保管すると安全です。
取扱い上の注意
水には非常に強い石なので、水洗いが可能です。皮脂汚れなどが気になる際は、中性洗剤を垂らしたぬるま湯でもみ洗いをします。汚れが落ちたら、洗剤が残らないように水でしっかりとすすぎます。また、アルコールティッシュで軽く拭くことでも汚れを落とすことができます。
ムーンストーンのアクセサリーを身につけた後は、乾いた布で空拭きをすると、ムーンストーンの美しさを長い間楽しむことができます。また、ムーンストーンは長時間直射日光に当て続けると退色してしまう恐れがあります。保管する際は蓋付きの箱に入れるなどして、直射日光が当たらないようにして保管するとよいでしょう。
まとめ
ムーンストーンは月のような柔らかな光が美しく、お手入れも簡単な天然石です。外見の美しさもさることながら、パワーストーンとしてもさまざまな効果を発揮するため、日常生活に華を添えてくれることでしょう。
普段とは一味違うアクセサリーを作ってみたい方は、ぜひお手にとってみてはいかがでしょうか。
ムーンストーンの鉱物データ
英名 | Moonstone |
和名 | 月長石/正長石(オーソクレース) |
分類 | カリウム・アルミニウム珪酸塩鉱物 |
化学式 | KAlSi3O8 |
色 | 白、桃、黄、緑、灰、無色 |
モース硬度 | 6 |
劈開性 | 二方向に完全 |
屈折率 | 1.52-1.53 |
結晶系 | 単斜晶系 |
断口 | 凹凸状 |
条痕 | 白色 |
比重 | 2.57 |
光沢 | ガラス光沢~真珠光沢 |
誕生日石 | 6月 |
石言葉 | 恋の予感 |
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