幻想的な深い青色を持つ 「ラピスラズリ」

代表作「銀河鉄道の夜」で知られる宮沢賢治は、「石っ子賢さん」と呼ばれたほどの石好きとして有名で宝石の専門的な知識を身につけ宝石商になる夢を持っていたほどです。宮沢賢治が書いた詩や童話には様々な宝石や天然石が散りばめられ、その色彩が織りなす幻想的なシーンは、印象深く心に残ります。

賢治が作品で最も多く使ったと言われている色は、「青」です。サファイアを天の川の河原の砂利に、トルコ石を空のひび割れに、ラズライトを海に、ラピスラズリを夜空にたとえています。

そんな賢治が愛した青の中でも特にラピスラズリの深く濃い青は、神秘的であり幻想的、そこはまるで入ってはいけないかのような領域に感じるのは私だけでしょうか。古くから愛されてきたラピスラズリについて、今回は深い青の世界へとご案内いたします。

この記事の内容

ラピスラズリの由来や産地について

ラピスラズリは、紀元前から「聖なる石」として崇められてきた歴史の古い天然石です。わかりやすい輝きを放つ美しさではなく、夜を纏っているかのようなしっとりとした神秘的な質感を醸し出しています。
世界中に流通しており、日本においても人気の高い天然石です。

ラピスラズリの名前の由来

ラピスラズリとは、ラテン語で「石」を意味する「ラピス」とアラビア語で「青」を意味する「ラズリ」を意味し、国と民族を超えた創作語です。
才能のある人はどこにいても目立つ、という諺に「瑠璃(るり)も玻璃(はり)も照らせば光る」とありますが、ラピスラズリは和名で「瑠璃」と言います。または、「青金石」とも呼ばれます。平安末期の歌集にも「瑠璃の浄土」と出てくるように、古くから日本においても「瑠璃色」は、夜の深い青の美しさを表わしています。

ラピスラズリの色・組織・成分について

ラピスラズリは「ラズライト」を主成分とし、「ソーダライト」「アゥイン」「パイライト」などの数種類の鉱物から構成されています。ラピスラズリの青色は、そうした鉱物の含み具合によって違ってきます。

宝石としてのラピスラズリは色むらのない深みのある青色で、ややパープルがかったものが良いとされています。「ラズライト」の粒子が多く含まれるほど深みのある青になります。また、深い青に輝く星のようにキラキラと金色が浮かんでいる「パイライト」を含む物や、雲のように白色の「カルサイト」を含む物を好む方も多いです。
かく言う私も幻想的な夜空を演出しているかのような金粉が点在するラピスラズリが好きです。

硬度は、5-6で繊細です。傷つきやすく汗や皮脂に弱いので、夏は特に注意が必要です。汗をかいたら軽く水ふきし、乾いた布で再度ふきとるようにしましょう。

ラピスラズリの産地について

アフガニスタンの山岳地帯

ラピスラズリの産地は、チリやロシアなどがありますが、最も有名な産地はアフガニスタンです。特に高品質のラピスラズリは6000年前と変わらず、今でもアフガニスタンで産出されています。

アフガニスタンの険しい山々が連なる山岳地帯で採掘作業をするため、高品質のラピスラズリの産出には限界があり供給量が決められているので希少性が高くなります。今でも鉱山に向かうまでは、首都のカブールから4日間もかかるそうです。採掘された後も不便な道を辿りながらヨーロッパ、インド、日本へと渡ってくるのです。雪深くなる地域でもあるので、鉱山への通行も6月から11月までと限られます。

6000年も前から過酷な地でこうして採掘され、長い時間をかけて運ばれてきたと思うと、壮大なロマンを感じますね。

ラピスラズリの意味と伝説について

ラピスラズリは紀元前の時代より護符として崇められ、歴史は古く数々の言い伝えがある天然石です。
「聖なる石」ラピスラズリについて、石が持つ効果や意味、また伝承されている不思議なお話などをご紹介していきます。

ラピスラズリの効果・意味

ラピスラズリは、「幸運と成功をもたらす石」と信じられています。人間誰しも妬みや嫉み不安など、心には曇りも生じます。ラピスラズリはそんな不安を取り除くパワーがあると言われています。

しかしながら、ただ単に棚からぼた餅が落ちてくるのを待っているような人には響きません。常に努力し、試行錯誤をしながら自分自身を高めている人にこそ、青のパワーが注がれるのです。邪念を取り除き、知恵が生まれ決断力が高まります。あなたの内なる意欲を沸き立たせましょう。

ラピスラズリに纏わる伝承

ラピスラズリは歴史のある石なので、数々の逸話や伝説が記述に残っていますが、日本においても語り継がれるお話が存在します。

人形浄瑠璃

日本の伝統芸能である「浄瑠璃」は、江戸時代に「人形浄瑠璃」として大流行しました。歌舞伎にも演目があり「浄瑠璃」と聞けば誰もが知っていると思います。

この「浄瑠璃」の「瑠璃」とは、清められた瑠璃(ラピスラズリ)という意味を持ちます。薬師如来が納める極楽浄土「東方浄瑠璃浄土」にちなむ言葉であり、この極楽浄土を飾る七種の宝のことを「七宝」と言い、ラピスラズリがその一つとされています。薬師如来は、「薬師瑠璃光如来」といった別名をもちます。「浄瑠璃」とは「浄瑠璃姫物語」とも言い、浄瑠璃姫と牛若丸との悲恋のお話です。

時は平安後期、三河の国司であった夫婦は、薬師如来にお祈りしてようやく授かった娘に「薬師瑠璃光如来」にちなんで「浄瑠璃」という名前をつけます。うら若き乙女となった浄瑠璃姫の弾くお琴の音色に誘われ、牛若丸(源義経)は持っていた笛(薄墨)を奏でます。それがきっかけとなり二人は一夜の契りを結びます。

その後、奥州へと旅出っていった牛若丸は、大病を患い浜に棄てられてしまいました。神のお告げを聞いた浄瑠璃姫は牛若丸を助けに行きます。浄瑠璃姫の看病で牛若丸は不思議なことに息を吹き返します。

諸説ありますが、姫の愛と薬師如来の瑠璃光パワーが牛若丸を生き返らせたと言われています。浄瑠璃姫は、牛若丸と会うのを反対された親に庵に幽閉されてしまいます。牛若丸との再会を心の支えとして生きてきた浄瑠璃姫は、悲願にくれて川に身を投げてしまいます。その後牛若丸は姫を訪ねますが、浄瑠璃姫はもうすでにこの世にはいませんでした。牛若丸が姫の墓所にお参りに行くと、供養塔が割れ姫の魂が飛び出し天に昇って行ったと言うお話です。

二人が出会うきっかけとなった、浄瑠璃姫の引く琴と牛若松が吹く笛(薄墨)を奏でる場面は、静寂に包まれた薄明かりの幻想的な夜にさぞかし美しい音色を響かせたことでしょう。浄瑠璃姫の瑠璃がちりばめられた極楽浄土へと昇天されるシーンも、この上なく神秘的です。

ひたすら思い願う気持ちは、強さと儚さを持ち、まるで生と死が隣り合わせであるのと同じような気がします。だからこそラピスラズリの青は、他の青とは一線を越えた神の領域の青なのではないでしょうか。

ラピスラズリを使用した装飾品や絵画について

ラピスラズリは、聖書の「出エジプト記」に記述があり、古代より宗教儀式で使用され、王家の墓からはたくさんの装飾品が見つかっています。

「浄瑠璃」を語る上でもご紹介しましたが、仏教において極楽浄土を飾る七種の宝のことを「七宝」と言います。仏典である「無量寿経」と、「法華経」で示す七宝に「瑠璃」として、ラピスラズリが入っています。「七宝焼」の語源も「七宝に匹敵するほど美しい」と言うことから来ていると言われています。

古来より存在する天然石だけに装飾品や、絵具として画家達が描いた絵画など、有名な作品が後世に残されています。

正倉院 紺玉帯

奈良時代は、華やかで国際色豊かな文化が広がっていました。奈良の正倉院には、その時代の美術工芸品などのお宝が良好な形で納められております。紺玉帯は、ラピスラズリが装飾された革のベルトです。アフガニスタン産のラピスラズリであると言われ、この時代から広範囲な東西の行き来があったことを明示する遺品の一つです。

東大寺正倉院 紺玉帯

ツタンカーメンのマスク

エジプトの副葬品として最も有名なツタンカーメンのマスクには、ラピスラズリが装飾され、黄金と青の美しいコントラストが王の絶大なる権力を物語っております。その豪華さと装飾技術の素晴らしさは、今でも人々を魅了しています。カイロのエジプト考古学博物館に収蔵されています。

ツタンカーメン王のマスク

中尊寺金色堂の留め金具

中尊寺の金色堂は、平安時代後期に建立された極楽浄土を表現しようとした工芸技術が集約された御堂です。遠くシルクロードを渡って運び込まれた、螺旋細工や宝石などがはめこまれ、内外は総金箔貼りといった絢爛豪華さに加え、留め金具には、仏法において「七宝」とされているラピスラズリが使用されているのです。

東北地方の戦いで亡くなった人々の魂を極楽浄土へと導き、平和を願い建立されたという金色堂は世界遺産となり世界中の人々が訪れています。

青いターバンの少女

ラピスラズリは、砕いて接着用の動物の皮を加工した蝋(にかわ)を混ぜた岩絵の具として数々の名画に使用されています。
その青色は、遠くアフガニスタンより海を越えてもたらされたということから、「ウルトラマリンブルー」と言われ、画家達に大変人気がありました。

ラピスラズリを使用した絵画として有名なのが、フェルメールの「青いターバンの少女」です。最も青が似合う少女として人気の作品の一つです。ラピスラズリの絵具は純金よりも高く、画家達は大変苦労したと言います。安価な材料もあったというのに、フェルメールはラピスラズリの青に最後までこだわったと言われています。

フェルメール 青いターバンの少女

ラピスラズリを使用したおすすめアクセサリー

ラピスラズリは比較的硬度が軟らかく様々な形に細工されやすいので、アクセサリー製作としての形状は実に豊富です。丸玉や、ゴロッとしたタンブル型や楕円やオーバル型、円柱や菱形など、多様な天然石ビーズが流通しています。

中でも、カッティングが施されたものは、ラピスの青をキラキラと一層引き立たせてくれます。少し贅沢な夜を演出したい時におすすめです。またカボションカットされたラピスラズリのペンダントトップも、ただチェーンに繋げるのではなく、ラピスラズリの3ミリか4ミリのビーズに繋げて一段と豪華さを出してみるのもお勧めです。

特にラピスラズリの青は、どんな装いにも合わせやすく、胸元や耳元を引き立ててくれます。ハンドメイドジュエリーとして創作意欲がわくのではないでしょうか?ペンダントやピアス・ブローチなど、からだの高い部分につけるとラピスラズリのエネルギーが高まり、リングとして指につけると危険から身を守ると言われています。

中世ヨーロッパでは、神聖なこの青色を身につけることができるのは国王だけだと言われていましたが、長い年月を経て多くの人々も気軽に楽しむことができるようになりました。中世の「おとぎの国」感に溢れた世界も憧れてしまうけれど、自由にラピスラズリを身につけられる現在に生まれてとっても幸せ・・・。限りない妄想の世界に浸りながら、オリジナルアクセサリーを作成してみてください。

まとめ

ラピスラズリについてお話をさせていただきました。ラピスラズリの深い青色を堪能していただけましたでしょうか?
ずいぶん昔に少女雑誌の綴じ込みに載っていた、ラピスラズリの勾玉の通販。今のようにネットなんてなかった時代、たった一枚の写真の青色は「願い事が叶う石」って怪しげながらも夢見る少女の心をつかんでしまいました。わくわくしながら、ラピスラズリが届くのを待っていたあの日が懐かしいです。

青はどこにでも存在する色ですが、ラピスラズリの青色は神聖であり、特別な世界観を醸し出しているような気がします。遠く輝く星空の下、センチメンタルな気持ちになっていた少女時代を思い出しながら、今宵もラピスラズリの深く神秘的な世界へと誘って(いざなって)もらいましょう。

英名Lapis lazuli
和名瑠璃(るり),青金石
分類ケイ酸塩鉱物 (変成岩)
化学式、組成(Na,Ca)7-8(Al,Si)12(O,S)24[(SO4),Cl2,(OH)2]ラズライト(主成分)混合
白、金、紺、青色
モース硬度5~5.5
劈開性不明瞭
屈折率1.5
結晶系等軸晶系
断口不規則な貝殻状
主成分ラズライト 、アウイン、ソーダライト、ノーゼライト、(カルサイト、パイライト)
条痕水色
比重2.38-2.95
光沢ガラス光沢~脂肪状
誕生日石9月、12月
石言葉幸運

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアいただけると嬉しいです!
URLをコピーする
URLをコピーしました!
この記事の内容
閉じる