翡翠(ヒスイ)|日本の国石、その魅力と特徴を解説

翡翠とは?翡翠の意味や効果を解説

翡翠は縄文時代より交易として使用されていたという歴史があり、日本のみならず中国などアジア各地で古くから崇められ大切にされてきた天然石です。

翡翠には、煌びやかなダイヤモンドやルビーとは違った奥ゆかしさを感じるものの「ぬらり」とした艶や質感には、ある種の色香を感じてしまうのは私だけでしょうか。危ない罠が潜んでいるような魅力があると思うのです。

今回は、翡翠が醸し出す魔性の世界にご案内いたします。

この記事の内容

翡翠(ヒスイ)の鉱物データ

英名jade
和名 翡翠(ひすい) 硬玉(ヒスイ輝石)、軟玉(緑閃石系角閃石_透閃石)
分類ケイ酸塩鉱物
化学式NaAlSi2O6(硬玉) Ca2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2(軟玉)
淡緑~濃緑、黒、白、紫、青、赤、橙、黄色
モース硬度6.5~7 (硬玉)  5~6 (軟玉)
屈折率1.66-1.68 (硬玉) 1.61-1.63 (軟玉)
劈開性完全
条痕色白色
断口多片状
結晶系単斜晶系
光沢ガラス光沢~脂肪状光沢
比重3.33 (硬玉)  2.96 (軟玉)
愛称ジェード、ジェイダイド、本ヒスイ/ネフライト、緑閃石、 透緑閃石 、アクチノ閃石、陽起石

翡翠(ヒスイ)について

翡翠(ヒスイ)は、2016年に日本鉱物科学会により日本の国石に選ばれました。

翡翠(ヒスイ)は誰もが知っている天然石の一つですが、詳しいことはあまり知らないという方が多いようです。緑色の丸玉はみんな翡翠だと思っている方や、中国で採れると思っていたり。

そんな勘違いや固定概念を振り払うべく、翡翠の基本的な知識を解説いたします。

今後翡翠を買いたいと思っている方は参考にしてください。

翡翠(ヒスイ)という名前の由来

カワセミを漢字変換すると、「翡翠」と出てきます。「翡」は、カワセミのオスを言い、「翠」は、カワセミのメスを言います。「翡翠」と書いてカワセミをさすのです。

翡翠という名前の由来

もともと、「翡翠」は中国が由来の言葉で、「翡」は鮮やかな美しい模様や羽という意味を持ち、「翠」とは緑とも読まれます。日本や中国では宝石の翡翠のことを「玉」と呼んでいました。

18世紀にミャンマーで硬玉が発見され中国に渡ります。美しい硬玉は大変希少であり、その豊富な色はカワセミの羽のように美しいことから「翡翠」と呼ばれるようになり、それが日本にもわたり宝石の玉を「翡翠」と呼ぶようになったそうです。

硬玉(ジェダイド)と軟玉(ネフライト)

翡翠の種類、ネフライトについて
軟玉(ネフライト)

翡翠は、硬玉(ジェダイド)軟玉(ネフライト)の2種類に分けられます。両者は見た目はよく似ていますが、鉱物学的には全く別になります。

東洋では権力者の象徴とされてきた翡翠ですが、煌びやかな宝石を好む欧米ではあまり人気はなく、硬玉(ジェダイド)と軟玉(ネフライト)や質感の似ている緑色の石をすべて翡翠の英名である「ジェード」と呼んでいました。

古代中国では軟玉(ネフライト)が産出されたため、宝石として扱われ大切にされてきましたが、硬度の高い硬玉(ジェダイド)が発見されたことにより区別されるようになりました。

どちらも小さな結晶が入り込んでいる変成岩で非常に頑丈ですが、より希少性の高い硬玉(ジェダイド)を「翡翠」と呼ぶようになり、わかりやすく「本翡翠」と呼ばれることもあります。

しかしながら、軟玉(ネフライト)の中で「羊脂玉」と呼ばれる透明度の高い白みのある高品質の物は殆ど出回ることはなく、硬玉(ジェダイド)よりも高い値がつくこともあります。

翡翠(ヒスイ)の産地

翡翠の産地について
ラベンダー翡翠

中国は古代から現在まで翡翠文化が盛んな国ですが、翡翠が採れる代表的な産地はミャンマーと日本の糸魚川になります。

18世紀になり中国との国境に接するミャンマーのカチン州で良質な翡翠が採れることがわかりました。1962年に翡翠はミャンマー政府によって国有化されます。しかしながら、ミャンマーに莫大な富をもたらした翡翠の鉱山は、現在は軍の手に渡り法の支配は崩壊し、軍部が翡翠市場と利益を支配していると報じられています。

一方日本で採れる最古の宝石である翡翠は、日本全国の古墳から見つかっている勾玉や丸球などは糸魚川で加工された物だと言われています。今でも一攫千金を夢見てたくさんの方が富山県と新潟県の県境の海岸に翡翠採りに集まってきています。翡翠峡から流れ出た原石が海岸に流れ着くのだそうです。

運がよければ翡翠に出会えるかもしれませんね。夢があります。但し海岸以外の「小滝川ヒスイ峡」「青海川ヒスイ峡」は国の天然記念物指定地域のため、採取や持ち出しは禁止されています。軟玉(ネフライト)は、ロシア産が多いです。中国ウイグル自治区の和田(ホータン)で採れたものは、「和田玉」と呼ばれ高値で取引されています。

翡翠(ヒスイ)の色

翡翠の色といえば、緑色と思われている方が多いと思いますが、特に硬玉(ジェダイド)には様々な美しい色味が存在します。

緑、ラベンダー、黄色、黒、赤系やオレンジ、黄色や茶系が含まれるものもあります。定番だと思われている緑色でも暗目のモスグリーンから鮮やかなアップルグリーンまで多岐にわたります。

中でも「ろうかん」と呼ばれる最高品質の翡翠は、とろりと油を垂らしたような艶やかなエメラルドグリーンで「翡翠の皇帝」と呼ばれ、最高級品となります。

翡翠の皇帝と呼ばれる宝石
ろうかんと呼ばれる翡翠

そのなめらかな質感と目を見張るようなグリーンは、気高く優雅で艶やかです。とは言え、好む色は人それぞれです。炭素を含む黒翡翠は、魔力が宿っているかのような神秘を感じますし、白から無色透明なアイス翡翠は、白無垢を纏ったかのような浄さにスーッと引き込まれます。チタンを含むラベンダー翡翠は上品で高貴なひんやりとした色味で、ゾクゾクさせてくれます。翡翠の色は実に奥深いです。そんな翡翠をより美しく、芸術的な権威ある一品に仕上げるのが翡翠彫刻です。

翡翠(ヒスイ)のモース硬度

翡翠(ヒスイ)のモース硬度

翡翠(ひすい)のモース硬度は、6.5~7、軟玉(ネフライト)が6~6.5とやや低くなります。硬度はダイヤモンドの方が高いですが、どちらも破壊に対する抵抗や粘りがダイヤモンドよりも強いので、細かい彫刻を施したアクセサリーや、茶器など数々の芸術品が存在します。

特に台湾の「故宮博物館」に展示されている「翠玉白菜」は有名ですね。中国では、白菜は子孫繁栄をもたらす縁起の良い野菜とされています。白菜の白い部分から葉の緑の部分、全て着色加工のないミャンマー産の翡翠を使用して彫刻された物です。白菜の上にはバッタとキリギリスがのっており、新鮮なみずみずしいお色目と細部にわたる細やかな彫りは見事としか言いようがありません。名品中の名品です。

翡翠(ヒスイ)の見分け方

翡翠(ひすい)はダイヤモンドのように世界共通の明確な基準が存在しません。買取専門業者の中でも翡翠は取り扱わない質屋さんが多いと聞きます。天然の翡翠と染めなどの加工処理した石を見分けるのがプロ以外の方には難しいのです。

ごく一般的な天然の翡翠には不純物による黒や茶褐色などの斑点が見受けられます。表面があまりにも滑らかで斑点もない綺麗な状態のものが翡翠として安価で売られている場合は、加工されていると判断して間違いはないでしょう。

特に海外で翡翠を購入する場合、手頃な物をわかっていて購入するのならよいですが、高額な物を購入する場合は次の注意が必要です。

翡翠の色について
  • 同じ色が並ぶお店は要注意

翡翠には様々な色が存在します。グリーンでも色調のバリエーションが豊富です。翡翠の原石を染める場合、色はワンパターンなので、ラベンダーカラーのみや、グリーン一色の色調を展開しているお店は染めている可能性があります。

  • 翡翠にライトをあててみる

ライトや太陽光を翡翠の真裏から透かして見てください。石目に沿って不自然に色が濃くなっている場合は、要注意です。染めている場合、石目に強く染料が入ります。天然の場合、石目は色が飛ぶので逆に薄くなる傾向があるそうです。

  • 指輪やペンダントトップとして製品加工している場合、ルースの真裏に地金が塞がれている製品は要注意

本来翡翠は石の裏が見えるように地金を作るのが基本となっています。真裏から光を当てることによってわかる翡翠特有の光の透けを見えなくしている意図が感じられます。

  • 翡翠の音を聞いてみる

翡翠(ひすい)のプロ達は、バングルの翡翠をたたいて、翡翠の音を品質定めの判断にする場合があります。翡翠の音は品質や透明度に直結します。結晶の緻密さにより音の高さが変わるのです。結晶の目が粗く不純物が入っている場合は、音が低くなります。高品質な翡翠の音色は、高く金属的でありながら静かに心の奥に響く美しい音色です。しかしながら、偽物でない限り翡翠は翡翠です。

どの色が高額だ、人気があると言ってもその価値を決めるのはご自身です。心に感じた、気に入った翡翠を選ぶことが一番大切です。但し、高額な翡翠を購入する場合は必ず鑑定書を作成してもらいましょう。

翡翠(ヒスイ)にまつわる伝承

翡翠の伝承、名所、糸魚川
糸魚川駅前の 奴奈川姫(ぬなかわひめ) 銅像

日本最古の歴史書である「古事記」には、糸魚川翡翠に纏わる「奴奈川姫(ぬなかわひめ)」伝説が記されています。

現在の北陸地方一帯を「越の国」または「高志国」といわれ、奴奈川姫という美しく聡明な姫が統治していました。越の国では翡翠が産出され、諸国との交易や祭祀に使われ、この国の重要な資源となっていました。そんな話を聞きつけた出雲の国(現在の島根県)の大国主命(おおくにぬしのみこと)は、翡翠やその加工技術などを手に入れてやろうと企み、奴奈川姫に求婚します。

最初は断っていた姫ですが、半ば強引なアプローチに根負けしてしまいます。出雲の国に移り住んだ姫の結婚生活は決して幸せではありませんでした。なぜなら、大国主命は姫よりも翡翠の利権が欲しかっただけですから。大国主命は姫から翡翠に関する情報を聞き出そうと何度も企みますが、姫は決して話そうとはしませんでした。耐えられなくなった姫は、出雲の国を抜け出し越の国を目指しますが、大国主命率いる軍勢の追っ手にもはやこれまでと思ったのか、自害してしまう。

といった悲しいお話です。

今では糸魚川駅や町のいたるところに奴奈川姫の銅像が立ち、映えスポットとしてにっこり写真撮影に応じてくれます。悲劇的な結果になってしまったものの、キャラクターとしてはアイドル並みで翡翠や街の観光に一役かっています。

翡翠(ヒスイ)の意味・石言葉

翡翠の石言葉と意味

翡翠はその美しさと共に、幸運、愛、調和、保護など、多くの意味を持つ石です。これも、翡翠がジュエリーや装飾品をはじめとしたさまざまな用途に使用される理由の一つだと考えられます。

翡翠が持つ意味の中でも最も強いと言われるのが、「保護と清浄化」です。古来から、翡翠を身につけることで邪悪なエネルギーから身を守り、心身の浄化を助ける力があると信じられてきました。また、翡翠は幸運と富の象徴でもあります。これは長い歴史の中で翡翠がしばしば富裕層に愛されてきたことから、繁栄の象徴としてこのような意味を持つようになりました。

翡翠の石言葉には「永遠の愛」や「調和」などがあります。愛情や友情を深める力があるともされ、人間関係の改善や、心の平和をもたらすとされています。また、「長寿」と「健康」を象徴する石としても知られており、古代から健康や長寿を願うアイテムとしても使用されています。

翡翠(ヒスイ)のパワーストーンとしての効果

翡翠(ヒスイ)のパワーストーンとしての効果

中国において翡翠は、五徳「仁・義・礼・智・勇」を高めるパワーストーンとされています。

「成功と繁栄」をもたらすと言われ、特に政治家や会社経営者、富裕層に大変人気があります。中国や台湾に行くと老若男女問わず、翡翠を肌身離さず身につけている方を多く見かけます。4000年の歴史を誇る中国で古くから現代までその効果を実感しているのですから、翡翠のもたらすパワーの真実味は一目瞭然ではないでしょうか。

「仕事や恋愛などを成功に導く」といったパワーがあると信じられてもいるので、若い方達もみなさん翡翠を身近に楽しんでいらっしゃいます。かく言う私も、東洋人特有の陶器のような肌、ぬらぬらとした魔性の光沢に白旗を上げた一人です。

中国のお金持ちは、第二夫人にはダイヤモンドを、第一夫人には翡翠を贈ったそうです。 とってもわかりやすい翡翠への称え方です。プレゼントしていただけるのであれば、どちらをいただいても嬉しいですが・・・。占い大国で最も愛されている天然石ですから、翡翠の効果を実感してみる価値はありますね。

翡翠(ヒスイ)を使用したアクセサリー

パワーストーンとしての翡翠

翡翠はカボションカットされたルースや、翡翠そのものをくりぬいたリング、まるでレースの様な繊細な彫刻が施されたペンダントトップや穴の開いたドーナツ型、勾玉や丸玉のビーズなど、様々な形が存在します。

特に翡翠のバングルは、翡翠好きの方々には憧れのアクセサリーの一つではないでしょうか。細見のバングルを重ねづけして時折響く音を楽しむのも素敵ですよね。縁起を担いだ動物や神獣の形に彫られたお守りなども高尚な感じがします。丸玉を通してお房をつけて真摯な気持ちでお数珠を作成するのもお勧めです。

和服の帯留めや、かんざしなどでしっとりラグジュアリーにまとめるのもよいですね。真逆にポップにはじけて胸のあいたタンクトップに合わせたネックレスも意外性があってよいと思います。

まとめ

翡翠(ヒスイ)は身につければ身につけるほど、美しくなる宝石と言われています。ずっとそばにおいて愛でていたくなるように溺れてしまうものの、天衣無縫で残酷な美しさは私の強い守り神でもあります。

心地よい罠からもはや逃れる術はありません。泣いたり笑ったり季節の移ろいを感じながら年を重ね、翡翠と共により美しく磨きをかけて参りましょう。

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翡翠の素材を紹介

翡翠(ヒスイ)のアイテム一覧

このコラムで紹介している翡翠(ヒスイ)の天然石アイテムはこちらからご覧いただけます。

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