
長年にわたり日本の国石にも定められていた水晶の中には、アイリスクォーツという種類の興味深い水晶があります。
アイリスクォーツとは水晶の生成過程で何らかの変化や地殻変動による圧力によって、クラック(ヒビ)が入った水晶です。
内部のクラックは虹色の輝きを作り、目を奪うような美しさを見せます。
今回はそんなアイリスクォーツの魅力や特徴などを解説。なぜクラックの入った水晶が虹色の光を見せるのか、また石言葉などについても解説しますのでぜひ最後までお読みください。
アイリスクォーツの鉱物データ
英名 | Iris Quartz / Rainbow Crystal Quartz |
和名 | 虹水晶 / 虹入り水晶 |
化学式 | SiO2 |
モース硬度 | 7 |
結晶系 | 六方晶系(三方晶系) |
比重 | 2.7 |
主な産地 | ブラジル・マダガスカル・中国など |
石言葉 | 願い・浄化・純粋無垢 |
アイリスクォーツとはクラックの入った水晶

日本で水晶と言えば無色透明の天然石として知られています。そもそも水晶は石英という二酸化ケイ素が結晶化してできる天然石のことを指し、英語ではクォーツ(Quartz・石英)です。
日本でイメージされる無色透明の水晶は、海外ではクリアクォーツ(Clear Quartz)やクリスタルクォーツ(Crystal Quartz)、そしてロッククリスタル(Rock crystal quartz)などと呼ばれます。
アイリスクォーツも無色透明ですが、一般的な水晶(クリアクォーツ)との大きな違いは内部に「クラック」が入っていることです。このクラックは、水晶の成長過程で地殻変動などの大きな圧力がかかることによって発生します。
もともと占いなどに用いられミステリアスな雰囲気がある水晶に、自然由来のクラックが入ることで他の水晶には見られない個性も兼ね備えたのがアイリスクォーツです。

アイリスクォーツのアイテム一覧
このコラムで紹介しているアイリスクォーツの天然石アイテムはこちらからご覧いただけます。
虹色を見せるアイリスクォーツ

アイリスクォーツはレインボークォーツやレインボー水晶という愛称でも親しまれています。「レインボー」と名が付く由来は、アイリスクォーツの内部に虹色の光が見えるからです。
この虹色の光は常に見えるわけではありません。光があたる角度によって、現れたり消えたりします。
したがってアイリスクォーツを手に持ち、それを回し見ると無色透明な状態に見えることもあれば虹色が見えることもあり、その様子は実にさまざまです。
虹色が見える仕組み

アイリスクォーツが内部に虹色の光を見せるのは、既にお伝えしたクラックによるものです。水晶内部のクラックに光が反射し、それが拡散することによって色が広がりレインボーのように多彩な色を見せます。
これは鉱物の光学現象の一つで「イリデッセンス」と言い、日本語では「遊色効果」と呼ばれます。
自然由来の不規則なクラックを起因とするイリデッセンスの現れ方は個体によってさまざまで、全く同じように見えるものはありません。無色透明の水晶にクラックとレインボーが絶妙なバランスで混在し、人口的には作ることができない「自然美」を見せてくれます。
アイリスクォーツの和名は「虹水晶」
虹色の光を見せてくれるアイリスクォーツですが、その和名は「虹水晶」です。一部では「虹入り水晶」と呼ばれることもあります。
その名の通り、水晶内部に虹が入っているように見えることに由来して名付けられました。
日常生活でも見かける機会が少ない貴重な虹が水晶の中に閉じ込められているように見え、神秘さも感じられます。
「アイリス」の由来は虹の女神

アイリスクォーツの「アイリス」という名前は、ギリシャ神話に登場する「虹の女神アイリス(Iris)」から名付けられたと言われています。
ギリシア神話の最高神であるゼウスの妻から七色の虹の首飾りと翼を授けられたアイリス。大空をその翼を使って渡り、神々や神と人との間で虹の架け橋のような役割を果たしたそうです。
幸運の象徴でもある虹とその女神であるアイリスのストーリーから「アイリスクォーツ」という名が生まれました。
価値の高いアイリスクォーツ

それぞれの個体がさまざまな様子を見せるアイリスクォーツですが、価値が高いと認められるためには基準があります。
それは透明度とイリデッセンスの強さです。透明度が高く、イリデッセンスがはっきり見えるアイリスクォーツは、天然石として高い価値が付けられます。
特にジュエリーとして加工されるようなアイリスクォーツは透明度とイリデッセンスが重視され、高品質で希少性の高い個体が用いられることが多いです。
しかしアイリスクォーツの価値を測るものはそれだけではありません。それはクラックの入り方です。既にお伝えしたように、アイリスクォーツに見られるクラックは自然由来であるため、個体全てが一点物です。
そんなクラックに「美」を感じる人は、アイリスクォーツの価値を透明度とイリデッセンスだけで判断しません。
どんなクラックが美しいのかということは、見る人の好みによっても異なります。アイリスクォーツを探す熱狂的なコレクターが存在するのも、このあたりに理由があるのでしょう。
アイリスクォーツとクラック水晶との違い

水晶の中には他にもクラックの入った「クラック水晶」という種類もあります。
爆裂水晶とも呼ばれることのあるクラック水晶ですが、アイリスクォーツとは似て非となるものです。その理由はクラックにあり、同じクラックでもクラック水晶は人工的に意図して作り出されています。
クラックは水晶に超音波を当てたり、加熱し急激な温度変化を加えたりする方法で作られますが、アイリスクォーツと比較すると細かく「ヒビ」という印象のクラックです。
水晶にクラックが入っている点は共通していますが、クラック水晶とアイリスクォーツはその様子が大きく異なりますので、その違いは覚えておくとよいでしょう。

無色透明ではないスモーキーアイリスクォーツ

水晶には特徴の異なるさまざまな種類がありますが、独特の個性を二つ備えた「スモーキーアイリスクォーツ」に注目してみましょう。
スモーキーアイリスクォーツは、スモーキークォーツにクラックが入り虹色の光を見ることのできる水晶のことを指します。
スモーキークォーツというのは水晶の一種で和名は茶水晶や煙水晶と呼ばれ、主に褐色や灰色の色つき水晶のことです。
落ち着いた雰囲気と上品さを併せ持つスモーキークォーツにクラックが入り、レインボーも見られるスモーキーアイリスクォーツは、水晶の中でもとても大きな魅力を持っています。
アイリスクォーツの石言葉と意味
宝石や天然石にはそれぞれ石言葉と呼ばれる言葉があります。
有名なのはダイヤモンドの「永遠の愛」などですが、アイリスクォーツにも石言葉はあり、それは「願い・浄化・純粋無垢」です。
水晶全体の石言葉は「完全・純粋・繁栄・神秘」ですので、それに似た石言葉が付けられていると言えるでしょう。そんな石言葉に加えて、虹の女神の名から名付けられたアイリスクォーツには「希望と幸運」という言葉で語られることも多いです。
虹は幸運の前兆とも言われていますので、内部にレインボーをのぞかせるアイリスクォーツも希望や幸運をもたらせてくれると考えられているのでしょう。
パワーストーンとしてのアイリスクォーツの効果

もともと水晶はパワーストーンとして、また他のパワーストーンを浄化してくれる天然石として人気があります。そんな水晶の一種であるアイリスクォーツも、パワーストーンとして人々にスピリチュアルな力を与えてくれると信じられています。
前述した「希望」や「幸運」の他にも、身に着ける人の心を強くし前進するのを後押ししてくれることも期待できるそうです。
またレインボーの光を内に秘めるアイリスクォーツは、その多彩な色から得られるさまざまな効果もあると言われています。
アイリスクォーツの主な産地

水晶は世界各地で産出されますが、上質なアイリスクォーツが採れるのはブラジルやマダガスカルが有名です。
その他には、中国やアメリカ、ブラジル、インドなども挙げられます。産地ごとに特徴に大きな違いが現れるような傾向はないため、選ぶときは産地はあまり気にせず各個体それぞれをよく吟味するとよいでしょう。
アイリスクォーツを取り扱う際の注意点
アイリスクォーツはクラックが入っているため、取り扱いや手入れの仕方には注意しましょう。
衝撃に弱いため、ぶつけたりするのはもちろん、落としてしまうと割れてしまう恐れもあります。
またクラックに水などが染み込んでしまうとイリデッセンスに影響を与えてしまうため、水は極力避け、汚れたときには柔らかい布で優しく拭き取るようにしましょう。
最後に / アイリスクォーツの魅力

今回は水晶の一種であるアイリスクォーツについてお伝えしました。
アイリスクォーツの最大の魅力は、絶妙なクラックと虹色の光です。アイリスクォーツには、無色透明の美しい水晶に特別なエッセンスが加えられたような魅力を感じることができます。
クラックはネガティブに捉えると不完全な印象を持ちますが、アイリスクォーツはそれを特徴的な個性にまで昇華させ、さらに多彩な色まで内包します。
全てが一点ものでオリジナリティもあり、ぜひ多くの人に手に取ってもらいたい天然石です。
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