
青・緑・スミレ色・黄緑などさまざまな色合いをも持つ天然石、アパタイトは、お手頃価格の宝石や、ハンドメイドアクセサリーの材料として人気があります。アパタイトの透明感のある輝きに惹かれる方も多いことでしょう。今回はアパタイトがさまざまな色彩を持つ理由や産出国、利用方法などを詳しく解説します。

アパタイトのアイテム一覧
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アパタイトの特徴
アパタイトは和名を「燐灰石」といい、燐灰石スーパーグループに属するアパタイトグループの総称です。現在アパタイトグループは、独立種として承認された12の鉱物で構成されています。なお、フローアパタイトという名称が用いられることもありますが、これは一般的なアパタイトを指すものです。ここでは、アパタイトにさまざまな色味がある理由や産出国などを解説していきます。

アパタイトは産出品のほとんどが天然石に分類される
アパタイトは、単一の石ではなく「アパタイトグループ」の総称です。名前の由来はギリシア語の「apate」で、「ごまかし」や「いつわり」という意味を持ちます。これは、アパタイトがしばしばトルマリン・ペリドット・ベリルなど似た色合いをしたほかの鉱物と間違えられていたからです。
現在もアパタイトは「パライバトルマリン」や「アウイナイト」といった希少価値の高い宝石と偽って販売されることがあります。そのため、アパタイトにマイナスなイメージを持っている方もいるかもしれません、しかし、アパタイトはとても魅力的な石ですよ。
アパタイトは産出量が多い石ですが、1ct以上の宝石として取引きされる石はごくわずか。ほとんどが天然石に分類されます。しかし、研磨すれば色味が美しいのでハンドメイドアクセサリーの材料などに人気です。一方、宝石として取り引きされるアパタイトは透明感のある輝きが美しく、高値が付けられることも珍しくありません。同じアパタイトでも宝石として取り引きされるものと、天然石に分類されるものでは値段に幅があります。
アパタイトは色味の幅が広い
アパタイトは、リン酸塩以外の含有する成分の違いでさまざまな色味が生まれます。ですから、色味や含有成分の種類によって「ブルーアパタイト」や「グリーンアパタイト」という名前で呼ばれています。ちなみに、最高級のアパタイトとして知名度の高い「アスパラガスストーン」は若葉のような黄緑色、「モロキサイト」は深い青緑色をしています。この2つの石を同時に見せられても、知識がなければ同じグループに属する鉱石だとは思えないでしょう。
アパタイトは世界中で産出される

※画像はイメージです.
アパタイトは世界中で産出される鉱石ですが、現在はブラジルやマダガスカル・メキシコなどが産地として有名です。かつてはスペイン産の黄緑色をしたアパタイトが「アスパラガスストーン」と呼ばれて高級品とされてきましたが、1990年代に入ると、マダガスカルやブラジルでの採掘が本格化しました。ちなみに、アパタイトは宝石や天然石として取り引きされる以外に、化学肥料(リン酸塩)の原料としても使われます。そのため、世界中にアパタイトの採掘場があるのです。なお、残念ながら日本ではアパタイトの鉱脈はありません。
アパタイトの意味

アパタイトは自己表現やコミュニケーションの能力を高めることで知られており、個人的な成長や集中力の向上にも役立つとされています。ここでは、アパタイトが持つ意味について、探求してみましょう。
自己表現やコミュニケーション能力の向上
アパタイトは、特に自己表現とコミュニケーションのスキルを高めるのに役立つとされています。日常生活において、自分の考えや感情をうまく伝えることは非常に重要です。アパタイトは、言葉を選び、自分の内面を正直に、かつ効果的に表現する手助けをしてくれると言われています。これは、プレゼンテーションや会議、あるいは日々の対人関係においても有益でしょう。
個人的な成長
個人的な成長とは、自己理解を深め、より成熟した考え方を身につけるプロセスです。アパタイトは、「個人的な成長の石」とも呼ばれ、自分自身と向き合い、内面の成長を促進する手段として利用されることがあります。この石は、自己受容や自己理解を深めることで、自信を育み、新しい挑戦に対する恐れを減らすことにもつながります。
集中力を高め、新しい学びや考えに対する心を開く
集中力の向上は、学習や仕事、日常生活の多くの側面で重要な役割を果たします。アパタイトは、注意力を集中させ、心を落ち着かせることで知られています。これにより、新しい情報の吸収や、複雑な問題解決に役立つとされています。また、新しい学びやアイデアに対する心を開くことで、柔軟な思考と創造的なアプローチを促進します。

アパタイトのアイテム一覧
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アパタイトの効果

アパタイトは、パワーストーンとしても人気があります。ここでは、創造性とインスピレーションの刺激、集中力と学習能力の向上、感情のバランスと平和という三つの観点から、アパタイトがもつ効果をご紹介します。
創造性とインスピレーションの刺激
アパタイトは、創造性を刺激し、新しいアイデアやインスピレーションを促す力があるとされています。芸術家やデザイナー、ライターなど、創造的な仕事に従事する人々にとって、この石は新たな創作の源泉となるかもしれません。日々の生活においても、様々な課題に対処する際に、新しい解決策を見つける手助けとなるかもしれません。
集中力と学習能力の向上
集中力の向上は、学習や仕事、さらには日常生活においても重要です。アパタイトは、注意力を高め、思考をクリアにすることで、学習やタスクの効率を向上させると言われています。また、新しい情報の吸収を容易にし、知識の習得をサポートする役割を果たすこともあります。
感情のバランスと平和
日々の生活におけるストレスや感情的な動揺は、誰にとっても避けがたい問題です。アパタイトは、感情のバランスを保つのに役立ち、心の平和と安定を促すとされています。ストレスが多い環境や緊張が高まる状況において、この石は落ち着きを取り戻し、感情的な調和を促進するサポートとなるでしょう。
宝石として取り引きされるアパタイト
では、宝石として取り引きされるアパタイトにはどのような種類があるのでしょうか?ここでは、その種類や色合いなどを紹介します。
ネオンブルーアパタイト

ネオンブルーアパタイトは、通常のアパタイトよりもブルーの発色が強く、透明感もあるアパタイトの総称です。宝石として取り引きされるネオンブルーアパタイトの中には、カボションカットを行うと猫の目のような光の筋が見える『キャッツアイ効果』が現れるものもあります。そのような品は特に高値です。そのさわやかな色合いから「夏の宝石」とも呼ばれ、ダイヤモンドと組み合わせて指輪などに加工されることもあります。
グリーンアパタイト

グリーンアパタイトは、透明感のあるグリーンが特徴のアパタイトです。グリーンの宝石というと翡翠やエメラルドが代表的ですが、アパタイトのグリーンはもっと透明感が高くなっています。青色のアパタイトに比べると産出量が少ないので値段が高くなりがちです。含有している物質によってグリーンの色合いや透明度が異なります。自分好みの色合いを見つけるのも楽しいものです。
イエローアパタイト

一見すると琥珀のようにも見えるこの石もアパタイトです。写真の物よりもう少しグリーン味が強く透明感の高いものは「アスパラガスストーン」と呼ばれることもあります。含有物に応じて黄味の深いものから、金色の近い物まで色味が豊富です。天然石として取り引きされるものでも、キャッツアイ効果が見られる石もあります。
天然石アパタイトの利用方法
宝石として取り引きされるアパタイトは、指輪やネックレスなどアクセサリーに加工されることが大半です。では、天然石として取り引きされるアパタイトはどのように利用されるのでしょうか?ここに一例を紹介します。

カジュアルアクセサリー
天然石として取り引きされるアパタイトの中でも質が良いものは、カジュアルアクセサリーに利用されることがあります。さまざまな色合いの石があるので、その日の気分に合わせて付け替えてみてもいいでしょう。異なる色味のアパタイトを組み合わせたものもあります。値段もお手頃価格なので、普段使いにちょうどよい感じです。
鉱物標本
含まれる物質によりさまざまな色合いになるアパタイトは、鉱物標本としても人気があります。原石から粗く加工されたものまでいろいろな形の標本があるので、好みのものを探しても楽しいでしょう。天然石や宝石としてはあまり流通しないパープルアパタイトの標本も美しいものです。
ハンドメイドアクセサリーの材料
天然石として取り引きされるアパタイトは、さまざまな形にカットされてハンドメイドアクセサリーの材料になることもあります。研磨の状態もさまざまで、原石を割っただけのものもワイルドさが人気です。1粒単位で取り引きされるものもあれば、1連単位で取り引きされるものもあります。大きさ、カットの形、色味などで値段が変わり、宝石に近い値段のものもあるでしょう。ペンダントトップなどに加工された状態で販売されているものもあります。好みのアパタイトを買ってきてオリジナルアクセサリーを作ってみるのも楽しいものです。店によっては何種類ものアパタイトを取り扱っているところもあります。

アパタイトのアイテム一覧
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アパタイトのモース硬度
アパタイトのモース硬度は5とされています。モース硬度とは、鉱物の硬さを評価する尺度で、1から10までの数字で表されます。この尺度において、硬度5は比較的柔らかい部類に入り、日常的な使用においては注意が必要です。
アパタイトを取り扱う際の注意点

ここでは、アパタイトを取り扱う際の注意点を解説します。天然石や宝石というと硬くて丈夫なものとイメージされがちですが、アパタイトは乱暴に取り扱ってはいけません。その理由を以下に説明します。
アパタイトは柔らかく割れやすい
モース硬度5というのは、ナイフで傷をつけることができる硬さです。最高の強度を持つダイヤモンドの約半分しかありません。同等の硬度を持つ天然石には、ラピスラズリや黒曜石などがあります。黒曜石というと、縄文時代に石器として加工されていた石です。硬度の高い石をぶつければ、簡単に砕けてしまうでしょう。加工されているアパタイトの多くが、事前にトリートメントされたり過熱して表面をガラス化したりしたうえでカッティングされています。ですから、不用意に加工仕様とすると割れてしまうこともあるので、気をつけましょう。
アパタイトは紫外線で退色する性質がある
アパタイトは紫外線や水分で退色・変質する性質があります。ですから、保管する際は日の当たらないジュエリーボックスなどにしまいましょう。「しばらく使っていなかったアパタイトのアクセサリーの色が変ってしまった」という場合は、紫外線や水分が原因のことが大半です。
アパタイトのアクセサリーを付けたら、乾いた柔らかい布でそっと拭いてお手入れしてください。紫外線が強い海や山のレジャーには付けていかないほうがおすすめです。洗い物をする際も外しておきましょう。
アパタイトは衝撃を避けて取り扱う
宝石には「靭性」(じんせい)があります。これは、衝撃に耐えうる強さを数値化したもので、アパタイトの靭性は3.5と大変低いものです。最も靭性が高いルビーやサファイアが8ですので、半分以下となっています。靭性が低い天然石や宝石は割れや欠けが生じやすいので、うっかりどこかにぶつけないように注意してください。また、宝石を加工する職人でも、アパタイトを爪留めする際、うっかり欠けたり割ったりしてしまうこともあります。ハンドメイドアクセサリーを作る際は、慎重に取り扱いましょう。ペンダントトップなどは、すでに爪留めされているものを使うのもひとつの方法です。
アパタイトを尖ったものでひっかかない
前述したようにアパタイトの硬度は5なので、ナイフで傷が付きます。尖ったもので表面をひっかかないようにしましょう。場合によっては針金の先や針先でも傷が付くこともあります。また、天然石同士がこすれあっても傷が付くので気をつけてください。ハンドメイドアクセサリーの材料を保管する際、硬度の高い石と一緒にしないようにしましょう。ペンチやピンセットを使うときも気をつけましょう。
アパタイトの鉱物データ
英名 | Apatite |
和名 | 燐灰石 りんかいせき |
化学式 | Ca[(F,OH) | (PO4)3] |
色 | 青 水色 黄 緑 紫 クリアなど |
モース硬度 | 5 |
劈開性 | なし |
屈折率 | 1.642~1.646 |
結晶 | 六方晶系 |
比重 | 3.10~3.35 |
星座石 | 双子座 |
石言葉 | 信頼 自信 調和 |
まとめ
今回は、アパタイトの特徴や色合い、産出国や使い道などを紹介しました。アパタイトは比較的産出量が多い鉱石で、宝石として取り引きされる量は少ないですが、とても高価というものではありません。その分、ハンドメイドアクセサリーの材料としては人気があります。
透明感と豊富な色合いは、ハンドメイド作家さんの想像力をかきたててくれることでしょう。お気に入りの石を普段使いのアクセサリーに加工するのも素敵です。なお、記事内で解説したように、硬度と靱性が低いので、取り扱いには気をつけてください。変色・退色を防ぐためには水分が長時間付着し続けないようにし、紫外線を避けて保管しましょう。
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