淡いブルーの色合いが、多くの方から愛されているエンジェライト。この記事では、見た人の心をやさしく包むような魅力にあふれたエンジェライトにまつわる歴史や、鉱石としての特徴などを解説しています。

エンジェライトとはどんな石か?

エンジェライトという可愛らしい名前は、空のようなパウダーブルーの色合いが「天使」を連想させることから命名されました。ニュアンスのある優しいブルーは、まさに癒しそのもの。天使が降りてきそうな空に例えられるのもうなずけますね。
語源には諸説ありますが、ギリシャ語の「Angelos」が元になっているといわれています。和名は「硬石膏(こうせっこう)」といいますが、最近ではエンジェライトという名称のほうが広く知られているようです。
豊穣と好天候のお守りとされたり、中国では漢方薬として珍重されるなど古来から各地で親しまれてきましたが、一般に流通しだしたのは1980年代に入ってからです。ジェムストーンとしての歴史は比較的浅いですが、空のような優しい色合いで人気の石になりました。エンジェライトの産出が行われているのは数か国ですが、中でも有名なのは南米・ペルーです。
アクセサリーやチャームの素材としても人気のエンジェライトですが、モース硬度3.5とかなり柔らかい石です。このモース硬度3.5がどのくらいの硬さなのかというと、硬貨などでこすると傷がつく程度とされています。そのため、耐久性を上げる目的で樹脂コーティングされているエンジェライトが多く流通しています。
加工されたエンジェライトは割れにくくなりますが、若干くすみが生じることがあります。原石のままのほうが、本来の美しいブルーがきわ立つのも特徴です。
エンジェライトの成り立ち

エンジェライトの和名である「硬石膏」という名前。実はアンハイドライトも同じ硬石膏という和名を持っているのです。その理由はエンジェライトという鉱石の成り立ちと深く関係があります。その関係を、順を追って見ていきましょう。
アンハイドライトは、彫刻材や建材としてよく知られているジプサム(石膏)と非常に近い関係にあります。産出される環境の湿度が高いとジプサムに、湿度が低いとアンハイドライトに変化するといわれています。産出条件が限られることから、産出量もアンハイドライトのほうが少なめです。
このように産出されたアンハイドライトにストロンチウムが含まれ、青色に変化したものがエンジェライトです。つまり、ジプサムとアンハイドライトとエンジェライトはいわば親戚のような関係にあるということですね。アンハイドライトとエンジェライトの和名が同じなのは「硬石膏」という名前がアンハイドライトを指すものだったからだそうです。
同じくストロンチウムを含む鉱石としては、セレスタイトが挙げられます。ドイツの鉱物学者ウェルナーによって「空の色の石=セレスタイト」と名付けられました。天青石という和名の通り、こちらも淡い青色が美しい鉱石です。爽やかな青色にはファンも多いですが、エンジェライトと同じく硬度が低く割れやすく、アクセサリーへの加工が難しいなどよく似た性質を持っています。
パワーストーンとしてのエンジェライト、意味と効果
「天使」を意味するエンジェライトですが、それ以外にも「博愛」や「平和」などの石言葉を持っており、優しさや癒しを象徴する石といわれています。 ひとの心に安定感や穏やかさをもたらし、目の前の壁を乗り越える手助けをしてくれるでしょう。自己肯定感を高めてポジティブに毎日を送りたい、ひとに優しくできるようになりたいという方の、お守りとしても人気のパワーストーンです。
相性の良い石は、アベンチュリンやプレナイト、セラフィナイトです。いずれもインスピレーションを高めて心を癒す石とされており、エンジェライトと組み合わせるとお互いの力を引き出しあうといわれています。
不安や戸惑いを感じる時、過去の失敗や挫折にとらわれそうな時に、一歩前へ踏み出す勇気を与えてくれるエンジェライト。自分への贈り物やお守りとしてだけでなく、大切な方へのプレゼントとしても愛されています。
エンジェライトを身につけるなら、硬さにも注意して
天使が舞い降りてきそうな美しいブルーが特徴のエンジェライトですが、非常に割れやすく加工が難しいことでも知られています。この割れやすさは劈開性という性質に関係しています。
劈開性とは多くの鉱物が持つ性質で「劈=裂く」「開=ひらく」という意味合いです。鉱物の原子やイオンが一定方向に結びつくことで、特定の方向から衝撃を与えると割れやすくなる性質を指しています。
この劈開性を利用することで硬い鉱物も加工しやすくなるというメリットがある反面、エンジェライトのような柔らかい鉱物は、少しの衝撃でも割れてしまうというデメリットもあります。 多くのエンジェライトは割れやすさをカバーするため、樹脂コーティングされていますが、それでも他のジェムストーンと比べて衝撃に弱い部類に入ります。落としたりぶつけたりしないのはもちろん、水分に触れないよう気を付けましょう。特に塩水は厳禁です。

エンジェライトを使ったアクセサリーをデザインする場合は、できるだけ石が衝撃を受けづらいよう配慮することが大切です。硬度の違う石同士を組み合わせると、接触した際に柔らかいほうが割れてしまうことがあります。例えばアメジストやアクアマリンのような硬いジェムストーンと隣接させることは避けましょう。
複数のジェムストーンを組み合わせるのであれば、編み込みブレスのように他の石やパーツが接触しないデザインを選ぶのがおすすめです。他にも、ひと粒ピアスやペンダントヘッドのように、エンジェライト単体で印象に残るデザインにするのも素敵ですね。
まとめ
この記事では、エンジェライトについてご紹介してきました。淡くやわらかい空のような温かみのあるブルーは、どなたからも好感を持たれる穏やかさと可愛らしさを兼ね備えています。ジェムストーンとしてだけでなく、原石のままの風合いを楽しむのもおすすめです。
アクセサリーやチャームなど、デザインの可能性が広がるエンジェライト。あなたはどのような「天使」をこの石に見出しましたか?
エンジェライトの鉱物データ
英名 | Angelite |
和名 | 硬石膏(こうせっこう) |
分類 | 硫酸塩鉱物 |
化学式 | CaSO4 |
色 | 白、青、灰、淡紅、帯赤、帯褐、無色 |
モース硬度 | 3-3.5 |
劈開性 | 完全 |
屈折率 | - |
結晶系 | 斜方晶系 |
断口 | 凹凸状-多片状 |
条痕 | 白色 |
比重 | 2.98 |
光沢 | ガラス~真珠状 |
石言葉 | 平和 |
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