
ジルコンはその澄んだきらめきと多彩なカラーで、古くから世界各地で愛されてきた宝石です。この記事では知っておきたいジルコンの基礎知識や特徴、石言葉などをご紹介しています。
ジルコンとは?基礎知識を解説

ジルコンの特徴
「世界最古の鉱石」として知られているジルコン。そのかたちが最初に形成されたのは、なんと44億年前のことだといわれています。気が遠くなるような太古の昔から地球に存在したジルコンは、クリアに輝くカラーレスやブルー、ブラウン、ピンクなどさまざまな色合いのものがあります。
名前の由来、和名
産地はカンボジアやオーストラリア、ミャンマーなど、広範囲に分布しており、世界各地の遺跡からも、ジルコンを使用した装身具や装飾品が多く出土してきました。ジルコンという名前は「zarkun」という単語が元になっていると言われていますが、これはアラビア語で「赤」を、古代ペルシア語で「金色」を意味しています。
また、日本ではジルコンのことを「風信子石(ヒヤシンス石)」と呼んでいます。これは色とりどりのジルコンをヒヤシンスの花に例えたものであるという説や、ヒヤシンスの語源にもなったギリシャ神話に登場する「ヒュアキントス」に因んだものであるという説など、こちらも諸説残されています。どちらの名前も、ジルコンの多彩なカラーや輝きをあらわした由来といえそうですね。
ジルコンのモース硬度
ジルコンのモース硬度は6.5-7.5と、比較的扱いやすい部類に入ります。モース硬度とは、鉱物がどの程度の硬さを持っているかを示す尺度で、1から10までの範囲で評価されます。硬度が高いことから、ジルコンはジュエリーとしての使用に非常に適しています。
同程度の硬度をもつ鉱石としてガーネットやアンダリューサイトなどが挙げられます。
ジルコンは12月の誕生石
2021年に行われた63年ぶりの日本における誕生石の改定で、ジルコンは正式に12月の誕生石に指定されました。12月の誕生石には従来のターコイズ、ラピスラズリに加えてタンザナイトとジルコンが新たに加えられましたが、どれも青いイメージの強い宝石ばかりです。
ジルコンに関してもやはりブルージルコンが象徴的な存在として12月の誕生石に加えられたのだと推測できます。今回の改定により、ジルコンは今後、知名度や人気がますます高まっていくでしょう。
ジルコンの鉱物データ

ジルコンは化学式ZrSiO4で表される鉱物で、ジルコニウムとシリコンの酸化物です。広範囲の色を持ち、色合いは無色、黄色、赤、緑、青、褐色など多岐にわたります。カンボジア、オーストラリア、ミャンマー、マダガスカルなど世界各地で採掘されます。ジルコンの結晶系は正方晶系で、硬度は7.5程度です。
英名 | Zircon |
和名 | 風信子石(ひやしんすせき) |
分類 | ケイ酸塩鉱物 |
化学式 | ZrSiO4 |
色 | 黄、橙、青、赤、緑、褐色 |
モース硬度 | 7.5 |
劈開性 | 二方向に完全 |
屈折率 | 1.93-1.98 |
結晶系 | 正方晶系 |
断口 | 貝殻状-不規則 |
条痕 | 白色 |
比重 | 4.69 |
光沢 | 樹脂状-金剛光沢 |
主な産地 | カンボジア等 |
石言葉 | 「安らぎ」「生命力」 |
宝石・ルースとしてのジルコンの魅力

多くの人が魅せられた輝きの秘密
ジルコンの珍しい特徴として、複屈折(二重屈折)があります。これは石に光を当てた時に光線を2本に分離させる性質のことを指しています。内部で光が屈折するので、より複雑に厚みを増して見えるというわけです。ジルコンと同じ性質を持つ宝石として、ペリドットやエメラルドなどがあります。
また、ジルコンはダイヤモンドのような「ファイア」と呼ばれる虹色の輝きを持つことでも知られています。ファイアとは、角度の違う小さなカットを幾何学的に組み合わせたファセットカットという加工を施すことで生じる、虹やプリズムのような輝きです。屈折率の高いジェムストーンほど美しいファイアが見られますが、その代表格とされているのがダイヤモンドです。ダイヤモンドが2.41の屈折率なのに対して、ジルコンも屈折率2.02とダイヤモンドに引けを取らない高い屈折率を持っています。
透明のジルコンは、ダイヤモンドの代替石として扱われることもありましたが、これはこのファイアによる輝きと屈折率がよく似ていたからだともいわれています。ちなみによく似た名前の代替石としてキュービックジルコニアがありますが、こちらもジルコンと深い関係がある石です。
ジルコンとキュービックジルコニアとの違い
先にもご紹介したように、ジルコンははるか昔から地球に存在している天然の鉱石です。それに対し、キュービックジルコニアはジルコニウムという元素を安定化させ、人工的に作られた石です。そのためキュービックジルコニアには、ジルコンの特徴でもある複屈折がみられません。
ジルコンと似た名前なのは、キュービックジルコニアのもととなるジルコニウムが、ジルコンから発見された元素であることが関連していると思われます。代替石として利用されているキュービックジルコニアですが、その輝きや多彩なカラーは天然石にひけを取りません。手頃な価格で手に入れられるため、アクセサリー製作などの心強い味方になるでしょう。
各地に残るジルコンの伝説

ジルコンは古くから人々に寄り添い、その美しい輝きで魅了してきました。世界各地の遺跡からはジルコンを使用した装飾品が出土したり、さまざまな名前で文献に登場したりしています。
古代インドの物語には、葉にジルコンをちりばめた枝を神への贈り物として祈りを捧げたという一節もあります。また、旧約聖書においては使徒にゆかりのある石として扱われ、エルサレムの城壁土台にもジルコンが埋め込まれました。16世紀に入ると、イタリアの職人たちがジルコンを用いたさまざまな装身具を製作し、その人気は一気に高まりました。
1800年代にはブルージルコンが大流行し、王室のジュエリーにも使用されるほどだったそうです。現在でもブルージルコンの人気は突出して高く、流通しているジルコンの約8割がブルージルコンであるというデータもあります。
ジルコンの種類

七色の輝き、ジルコンのカラーバリエーション
ジルコンは、カラーバリエーション豊かな宝石です。カラーレスからブルー、イエロー、グリーン、ブラウン、ピンクまで、さまざまな色調が楽しめます。
この多彩な色合いが、ジュエリーやアクセサリーの素材としての魅力をさらに高めています。屈折率が高く複雑な輝きを見せることから、アクセサリーのワンポイントに用いるだけで強い印象を残してくれるのです。ここでは、ジルコンの主なカラーについてご紹介しています。
・イエロージルコン
はちみつのようなつや感とジルコン特有の強い輝きが印象的なイエロージルコンは、世代を問わず身につけられる落ち着きと華やかさを両立した石です。薄めのイエローからグリーンかかった色まで、さまざまな色調があるので好みに合わせて選べるのもポイントです。
・グリーンジルコン
グリーンジルコンも深い森のような深みのあるグリーンから、渋めのモスグリーンまでさまざまな色合いのものがあります。吸い込まれそうなグリーンは、昔から根強い人気です。
・マルチカラー
流通量は少ないものの非常に人気が高いのが、ブラウンジルコンとホワイトジルコン(カラーレス)の両方が入ったマルチカラーです。二色がきれいに分かれたジェムストーンは、コレクターの間で非常に高い評価を受けるものも。オクタゴンカットやバゲットカットなど、色の境目がよく見えるカッティングが映えるカラーです。
・ブルージルコン
ジルコンの中でも特に高い人気を誇るのが、ブルージルコンです。透明度の高いブルーと複屈折による虹色のきらめきから「スターライト」という別名もつけられるなど、古くから装身具やお守りとして多くの方に愛されてきました。また、グリーンがかった深みのあるブルーは「エナメルブルー」とも呼ばれ、ブルージルコンの中でも特に珍重されています。
ブルージルコンの加熱処理
ジルコンは加熱により色が変わる特徴を持ち、古くから『加熱処理』されていたという記録があります。
ブルージルコンはタイやカンボジアで多く産出されていますが、流通しているものの中には加熱処理をして青い色調を引き出しているものもあります。加熱することで色が変化する性質を利用した「トリートメント」と呼ばれる処理で、薄い褐色や透明のジルコンを青へと変化させているのです。
加熱処理を行うことで、ジルコンはより鮮やかな色調へと生まれ変わります。宝石が元来持っている美しさをより引き出したブルージルコンは、愛好家の間でも高い人気を集めています。
ジルコンの3つのタイプ

ジルコンは正方晶系という形の結晶系を持つジェムストーンです。ジルコニウムをはじめとしたさまざまな物質を取り込んで結晶を形成していくわけですが、その過程でウランを取り込んでしまうことがあります。
アルファ線を放出しているウランにより結晶の内部構造が崩れると、光の屈折率や硬度が下がってしまいます。つまりジルコンの強い輝きはウランの含有率によって変わってくるというわけですね。ジルコンはウランの含有量によって、3つのタイプにも分類されています。
・ハイタイプ
ウランによるアルファ線の放射をほとんど受けていないジルコンです。結晶構造が損傷していないため輝きが強く、宝石としても高く評価される傾向があります。カラーレスやブルージルコン、イエロージルコンなどがこれにあたります。
・ミディアムタイプ
ウランによる影響を多少受けており、結晶構造に損傷がみられます。グリーン系のジルコンに多いといわれています。
・ロータイプ
結晶構造が大きく損傷しており、屈折率が低下しているものです。ものによっては硬度が下がっているものもあります。こちらもグリーン系のジルコンが主です。宝石品質のものはあまりありませんが、独特の深みがあるグリーンは、ロータイプにしかみられないものだといえるでしょう。
ジルコンの石言葉

ジルコンにつけられた石言葉には「安らぎ」「生命力」など前向きな言葉が多く、ジルコンの無限の可能性を感じさせます。その輝きの強さから「成功」「祈り」など、より高みを目指す石言葉も持っています。ジルコンには傷ついた心身を癒す効果もあると昔から信じられており、別名「平和の石」と呼ばれ安産のお守りとしても愛されてきました。
パワーストーンとしてのジルコン、そのヒーリング効果

ジルコンは、世界最古のパワーストーンのひとつです。輝く美しさだけでなく、持つ人に対して多面的なヒーリング効果をもたらしてくれます。
良縁を引き寄せる効果
ジルコンは、「運命の石」とも呼ばれ、持ち主に適した良縁を引き寄せる力があると言われています。この石を持つことで、恋愛や友情など、さまざまな人間関係において、ポジティブな繋がりを築きやすくなるとされています。ジルコンは、心と魂を開き、真実の愛や深い絆を見つける手助けをしてくれるでしょう。
心を落ち着かせる効果
ジルコンには、心を穏やかにし、ストレスや不安を和らげる力があります。日々の忙しさやプレッシャーから解放されたい時、この石は心の平和を取り戻すサポートをしてくれます。特に瞑想やヨガの際にジルコンを身につけることで、深いリラクゼーション効果を得られ、内面からの落ち着きを実感できるでしょう。
前向きな人間関係を構築する効果
ジルコンは、持ち主が周囲の人々との間に健康的で前向きな関係を築くのを助けます。この石はコミュニケーション能力を高め、誤解や衝突を避けることに寄与するとされています。ジルコンを身につけることで、他人との関係をより理解し、共感し、支え合うことができるようになります。
ジルコンと相性が良い石、お互いの力を引き出せる石としてはペリドットやターコイズ、ガーネットなどが挙げられます。ジルコンはそれなりの硬度があるので、一般的な浄化方法にも対応可能です。パワーストーン初心者の方でも扱いやすい石だといえるでしょう。
ジルコンを身につける意味、おすすめしたい人

ジルコンはその輝きとともに、安らぎ、生命力、成功、そして祈りなど、多くの前向きな意味を持ちます。これらの意味は、ジルコンが持つ可能性と、身につける人へのポジティブな影響を象徴しています。
■新しい人間関係を求めている人
良縁を引き寄せる効果があるため、新たな友情や恋愛を望んでいる人に最適です。
■心の安らぎを求める人
ストレスや不安が多い現代社会で、心の平和を取り戻したいと願う人にぴったりです。
■前向きな人間関係を築きたい人
コミュニケーションの向上や、理解深い関係を築きたい人にも適しています。
■自己実現を目指す人
「成功」と「祈り」の石言葉を持つジルコンは、目標達成や夢の実現を目指す人の強力なサポーターです。
■心身の癒しを求める人
心身の傷を癒やし、内面からの平和を望む人にもジルコンは大きな力を与えてくれます。
■妊娠中の女性
安産のお守りとして古来から信頼されてきたことから、妊娠中の女性やその家族にもおすすめです。
まとめ

ジルコンは、その強い輝きで古くから多くの人を魅了してきました。ダイヤモンドの代用として名前が知られたという側面もありますが、さまざまなカラーと輝きには独特の魅力があふれています。
身につけているだけできらめくパワーをもらえそうなジルコンを、ぜひコレクションにくわえてみてくださいね。
表示するURL:https://www.kenkengems.com/?mode=cate&cbid=317094&csid=0