
一般的な鉱物は、地中や海中など自然の中で育成されるものが多いですが、中には人工的に作られた鉱物もあります。
ビビッドなカラーが層になっているフォーダイトもそのひとつ。フォーダイトは、なんとアメリカの自動車廃工場で発見された人工鉱物です。
この記事では、フォーダイト発見の秘密と、特徴について解説しています。フォーダイトの不思議な模様が気になる人はぜひ最後まで読んでみてくださいね。

フォーダイトのアイテム一覧
このコラムで紹介しているフォーダイトの天然石アイテムはこちらからご覧いただけます。
フォーダイトとは

フォーダイト(Fordite)とは、アメリカ・ミシガン州デトロイトにある自動車の廃工場で発見された人工鉱物のひとつです。
名前の由来
名前の由来は、フォーダイトが発見された工場の所有者である自動車メーカー「フォード(Ford)」と、地名の「デトロイト(Detroit)」、瑪瑙(めのう)を意味する「アゲート(agate)」を組み合わせた造語です。
また、「デトロイト瑪瑙」「自動車瑪瑙」と呼ばれることもあります。
その名のとおり瑪瑙のような縞模様がフォーダイトの特徴ですが、その層には、自然界に存在しないようなビビッドな色も含まれています。
これは、フォーダイトが作られる過程に理由があります。
フォーダイト誕生の由来

20世紀初め、自動車の塗装は手作業でラッカー塗料をスプレーで吹き付けた後に、高熱処理する方法で行われていました。
そのため、作業場や通路には、車からしたたり落ちた塗料が付着し、場合によっては高熱処理中の余熱を受けて固まって、どんどん堆積していったのです。
堆積物がある程度の高さになると、作業にも支障をきたすことから、破棄するために堆積物を切り取ったところ、断面がいくつもの層が積み重なった、美しいマーブル模様やモザイク模様になっていることがわかりました。
この美しさに目を付けた作業員がカットし、研磨したところ、装飾品として使えるまでになったのです。
アメリカの自動車史の遺産としても重要

フォーダイトは、アメリカ自動車産業の歴史を検証することもできる貴重な遺産でもあります。
1940年代、アメリカのデトロイドは、自動車産業が盛んでした。1台の塗装が終わって、周辺に塗料が飛び散っていても清掃する間もなく次の車の塗装にかかる状態が続いていたのです。
そのため、層がどんどん重なり合って、鉱石のような大きな塊になっていきました。つまり、20世紀初頭の自動車産業がどれほど活発であったかを垣間見ることができるのです。
また、1940年代ごろとみられる層には黒や茶などシックなカラーが使われています。やがて1960年代になると、赤や青などのはっきりとしたカラーが使われていることから、自動車における色の流行なども読み取ることができます。
今後どんどん希少価値が高まるとみられる
一時は、デトロイトの主要産業であった自動車産業も、時代の流れとともに工場が閉鎖され衰退していきました。
工場作業がオートメーション化されたこともあり、手作業での塗装がなくなったことから、これ以上新しいフォーダイトの生産はないと考えられます。 そのため今後は、人工鉱物としての価値も上がっていくとみられています。
フォーダイトの産地

フォーダイトは、アメリカ・ミシガン州デトロイトにある自動車の廃工場で多く見つかっている鉱物です。
しかしほかの地域で、似たような塗装を行なっている産業の古い工場でも産出されることもあります。
似て非なるレインボーカルシリカ

フォーダイトとよく混同されるのが、レインボーカルシリカです。
レインボーカルシリカは、メキシコで産出される人工鉱物のひとつで、フォーダイトのような鮮やかなカラーが層になっています。ふたつの違いは、組成物です。
フォーダイトには、天然の鉱物は含まれていませんが、レインボーカルシリカには、カルサイト(方解石)とシリカが含まれているのが特徴。さらにプラスチックで固められています。
発見当初は「天然石」であるといわれていましたが、のちにプラスチックなどの人工的な成分が検出されたため、今では人工鉱物として取り扱われています。
一見しただけでは、フォーダイトとレインボーカルシリカの見分けがつかないので、購入の際には販売者によく確認しましょう。また、日本でも似たような層が美しい装飾品に「堆漆(ついしつ)」というものがあります。
こちらは、化学塗料ではなく、様々な色の漆を200~300回塗り重ねて層にしたものです。 フォーダイトほどの華やかさはありませんが、とても趣があります。
アクセサリー素材として最適

自動車の塗料は、ラッカー塗料が多く使われており、揮発性のある溶剤に、色を付ける顔料と、固めて定着させる樹脂を混ぜたものが一般的です。
高熱処理や経年変化により、樹脂と顔料だけが残ったフォーダイトは、レジンやプラスチック樹脂のようにとても軽く、加工も簡単です。
そのためペンダントトップやピアスなどに加工するアクセサリー素材として人気があります。
まとめ

本来なら、捨てられるだけだったかも知れない、フォーダイトですが、抽象絵画のような不思議な見た目と、その生い立ちから注目を集めるようになりました。
今後は、新たなフォーダイトが生産される可能性もないため、どんどん希少価値も上がっていくとみられます。 チャンスがあればアメリカと自動車の歴史に思いをはせながら、フォーダイトを手にしてみてはいかがでしょうか。
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