クンツァイトは、スポジュメン(スポデューメン)という鉱物の一種です。ピンク色のものをクンツァイト、緑色~黄緑色の石をヒデナイト、黄色の石をトリフェーンと、カラーによってそれぞれ異なる宝石名を持っています。
今回スポットを当てるのはピンクや紫がかった美しいカラーが人気のクンツァイトです。実はあまり知られていないこちらの天然石、今後もっと知られることになるかもしれません。その宝石としての価値を紹介してまいります。

クンツァイトとは
クンツァイトの鉱物データ
英名 | Kunzite |
鉱物名 | スポジュメン(スポデューメン) |
和名 | リチア輝石(りちあきせき) |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
化学式 | LiAlSi2O6 |
色 | 無色、ピンク色、紫色、緑色、黄色 |
モース硬度 | 6.5-7 |
劈開性 | 完全 |
屈折率 | 1.66-1.68 |
結晶系 | 単斜晶系 |
断口 | 亜貝殻状 |
条痕 | 白色 |
比重 | 3.0-3.2 |
光沢 | ガラス状光沢 |
主な産地 | アフガニスタン、ナイジェリア等 |
石言葉 | 無償の愛、無限の愛、純粋さ、可憐 |
クンツァイトの特徴

クンツァイトの鉱物名スポジュメン(スポデューメン)は、ギリシャ語で「燃えて灰になる」という意味に由来しており、もともとは無色や黄色がかった灰色の石です。ストーン内部のアルミニウムイオンがマンガンイオンに置き換わることで、特有の美しいピンクに発色します。クンツァイトのピンク色は天然のものもあれば、加熱処理や放射線処理により人工的に付けられたり色味を強められているものもあります。しかしいずれの場合にも宝石としての美しさと価値に相違はありません。
クンツァイトには2つの特徴的な性質があります。ひとつは「燐光性」。これはダイヤモンドのように、太陽の紫外線を当てた後に暗い部屋へ持ち込むと光を放つという特性です。ろうそくのオレンジ色の光や白熱灯のもとで、とりどりのピンク色のグラデーションを見せてくれるクンツァイトはパーティーシーンなどでその場を華やかに彩ったことから「夕べの宝石」とも呼ばれています。
クンツァイトのもうひとつの性質は「多色性」です。これは見る角度によって表れてくる色味が違うというものです。透明感や色味の濃淡、または色そのものがやや違ったものに見えることもあります。一般的にはテーブル面から見える色が最も綺麗に見えるようなカットをほどこされて宝石となります。
クンツァイトの名前の由来、和名
クンツァイトは1902年にカリフォルニア州のホワイト・クイーン鉱山で発見されたのが始まりの、比較的新しい天然石です。この石がスポジュメン(スポデューメン)の変種であると発見したのは、有名な宝石店ティファニーの宝石顧問であり鉱物学者のジョージ・フレデリック・クンツ博士でした。博士の名前をとってクンツァイトと名付けられたことがその名の由来です。
また、当初発見された紫がかった美しい色味と、採れた地名にちなんで「カリフォルニア・アイリス」という素敵な愛称でも呼ばれました。和名は「リチア輝石(りちあきせき)」といい、含まれている大量のリチウムが資源としても重宝されていることから付けられています。かつては「黝輝石(ゆうきせき)」と呼ばれていました。「ゆう」は青黒い、黒ずんだ輝石という意味で、もとの灰色のカラーから想起された和名でした。
クンツァイトの主な産地

クンツァイトの主要産地はアフガニスタンとアフリカのナイジェリアです。アフガニスタン産は透明度が非常に高く、それでいて鮮やかな紫ピンクのカラーがしっかりと発光してきらきらと輝きます。この透明感の高い結晶は昔から宝石としてとても人気があり、この美しさに魅せられた芸術家パブロ・ピカソもこの宝石をあしらった作品を創り出しています。
ナイジェリア産のものは、いわゆるミルキークンツァイトと呼ばれるもので、その名の通り、パープルピンクにホワイトカラーを混ぜ合わせたような優しいミルキーな色合いです。透明感はあまりなく、そのぶん優しげなラベンダーピンクカラーが濃いめにきらめきます。中にはキャッツアイ効果が見られるものもあり、愛好家にはたまらない魅力ですね。
カラーの濃淡と輝きの種類、それぞれ異なる素晴らしいチャームポイントがあるので、お好みに合わせてそばに置いてみるのも楽しいです。どちらのバリエーションも持っているという方もよく聞きます。また、比較的大型の結晶が見つかるため、世界の博物館には何百カラットもあるものが展示されたりもしています。これまで発見された結晶の中で最も大きかったもので、約14mもあるものもありました。
クンツァイトは新たな9月の誕生石となった宝石

2021年に日本の誕生石がなんと63年ぶりに改定され、クンツァイトは9月の誕生石として新たに仲間入りをしました。これまでは9月の誕生石といえばサファイアだけでしたが、クンツァイトが追加されることでより誕生月を楽しめるバリエーションが増えましたね。
サファイアはブルーサファイアを誕生石として持っている方が多いので、クンツァイトのピンクカラーはまた違った一面を楽しめると思います。お誕生日プレゼントにピンクの宝石をリクエストされた時などクンツァイトは最適ですね。
クンツァイトの石言葉と意味

クンツァイトの石言葉は、「無償の愛」「無限の愛」「純粋さ」「可憐」など。ほかにも「聖母マリアの石」、「神の愛に繋がる石」という表現をされることもあります。
クンツァイトはその柔らかで美しい色味から愛の石として知られていますが、その愛はクンツァイトからもたらされる癒しをベースにした愛の形からなるものという意味がこめられています。ピンクカラーの天然石は愛がつく石言葉を持っていることがよくありますが、このクンツァイトの愛に関してはより深い意味合いがあります。次でじっくりご紹介します。
クンツァイトのパワーストーンとしての効果

クンツァイトにはその石言葉からもわかるように、癒しを基盤とした慈悲深い愛情をもたらしてくれる効果があります。純粋なエネルギーを持っていて、ハートチャクラ(第四の心のチャクラ)に良い影響を与えて整えます。
具体的には、まずは自分を信じて愛する手助けをしてくれて、なおかつその状態で、他人を愛して人のために何かできるようになれるよう導いてくれます。まずは自分自身を幸福な状態にしてくれるという効果が、さまざまなストレスを抱えて自分自身を肯定できなくなるような壁に苦しむ現代人に寄り添ってくれます。
心理学的に愛とは、利己的な愛と利他的な愛を経験したのちに相互愛へ発展することで幸福に実現されると言われています。クンツァイトはまさにこうした愛を実現するために必要な土台を築いてくれる力を持つ天然石です。人間関係に疲れたり傷ついたりした時にきっと力になってくれます。またその効果から、老若男女問わずお守りのパワーストーンとしての贈り物にしても相応しいの天然石なのではないでしょうか。
クンツァイトの浄化方法、お手入れ方法
おすすめの浄化方法
クンツァイトは特に太陽光などに含まれる紫外線に弱く、紫外線を長時間当ててしまうと褪色してしまいます。ですので太陽光での浄化は行わず、普段の生活の中でも紫外線に注意しましょう。先述した特質の「燐光性」を試してみようとすると影響があるのでこれも気をつけましょう。
クンツァイトに推奨される浄化方法は月光浴、セージ、水晶です。自分自身を肯定できて、人に愛情を捧げることができたと実感した時にはお礼の意味も込めて浄化してあげましょう。パワーチャージがされたら、昨日よりもっと前向きで愛にあふれた日々になる手助けをしてくれます。
日常のお手入れ方法
クンツァイトの表面の汚れは、柔らかい布で優しく拭き取ることで清潔に保つことができます。さらに、ぬるま湯と中性洗剤を使用して優しく洗うことも可能ですが、洗浄後は柔らかい布で水分をしっかりと拭き取り、自然乾燥させてください。硬いブラシの使用や超音波洗浄機の使用は避け、優しく扱うことが重要です。
取り扱いの注意
クンツァイトは完全な劈開性を持つ天然石としても有名で、縦に割れやすい性質があります。大きな衝撃を与えないように注意しつつ、加工の際にも丁寧に取り扱うことをおすすめします。最も美しく輝くカットをテーブル面にほどこすと先述しましたが、このデリケートな性質から、研磨作業中にわずかな衝撃で割れたり欠けたりすることもあり、「カッター(研磨職人)泣かせの宝石」とも言われています。
また、長時間の直射日光によって色あせることがありますので、特に夏場の屋外で身につける時には注意が必要です。
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