
自然が創る「青色」に心を惹きつけられる人は少なくないでしょう。
海が見せる青、蝶や熱帯魚などの生物が見せる青。そして誰の頭上にも平等に広がる空の青もその一つです。今回はそんな中から空の「青」に深く関係する天然石「セレスタイト」を紹介します。
セレスタイトの和名は天青石(てんせいせき)。魅力はその色と儚さです。名前の由来や注意すべき取扱い方法についても解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
セレスタイトの空色 / 和名は天青色

セレスタイトの和名は天青石(てんせいせき)と言い、その名の通り「空の青色」を思わせる色をした天然石です。一部では「天晴石(てんせいせき)」と表記されることもあります。
セレスタイトの色は真っ青なブルーではなく、少し灰色がかった繊細な青水色です。
明るいスカイブルーというよりも現実によく見かける空の色をしていますが、決して「どんより」と曇った空のような印象はありません。
そんな少し灰色がかった繊細な青水色がセレスタイトの特徴ですが、無色・黄色・オレンジ色をしたものもあります。
セレスタイトの歴史と名前の由来
セレスタイト(英名:Celestite)という名前の由来に関しては、以下の二つがよく知られています。
- 英語で「この上なく美しい・大空のような」という意味のある「celestial」に由来
- ラテン語で「天国のような」という意味のある「coelestis」に由来
英語かラテン語のどちらを語源としているかは定かではありませんが、いずれにしても「空」という意味に由来していることは確かなようです。
実際に「セレスタイト」と名付けられたのは1798年。名付け親はドイツの鉱物学者だったウェルナーという人物です。
初めて発見されたのは、ウェルナーがセレスタイトと名付ける7年前の1781年。場所はイタリアにある地中海最大の島「シチリア島」になります。
セレスタイトの鉱物情報と特徴

セレスタイトは、繊維状の結晶で構成された斜方晶系と呼ばれるグループに属するバライト系の硫酸塩鉱物です。
鉱物としての各種データは以下のようになります。
鉱物名 | セレスタイト ※セレスティンとも呼ばれる |
英名 | Celestite |
和名 | 天青石 / 天晴石 |
化学組成 | Sr[SO4] |
色 | 青水色・無色・黄色・オレンジなど |
結晶 | 斜方晶系 |
比重 | 3.89 - 4.19 |
モース硬度 | 3 - 3.5 |
含まれる特徴的な成分 | 硫酸ストロンチウム |
特徴的なのは低いモース硬度です。これに関しては「セレスタイトのモース硬度」の項目で後述しますので、まずは「硫酸ストロンチウム」という成分に注目してみましょう。
紅色の炎を発するセレスタイト

セレスタイトに含まれる「硫酸ストロンチウム」は、加熱すると鮮やかな紅色の炎を発します。このように燃えて光を放つ現象は「熱発光」と呼ばれ、セレスタイトの特徴的な炎色反応です。
このような特徴を持つことから、セレスタイトは赤色の花火の材料に使われたり、信号灯や照明弾にも用いられています。
空の色と名付けられているのに燃やすと赤く光り、花火として打ち上げられて夜空を赤色に彩る瞬間は、セレスタイトの意外な一面と言えるでしょう。
セレスタイトのモース硬度は「3 - 3.5」
セレスタイトの大きな特徴には、「傷つきにくさ」の尺度であるモース硬度の低さが挙げられます。
セレスタイトのモース硬度は「3 - 3.5」で10円硬貨と同等かそれよりも低い値です。ナイフで簡単に傷つけることができるのはもちろん、モース硬度2.5の人間の爪で引っ掻いて傷がつく可能性もあります。
また、セレスタイトは劈開性(へきかいせい)と呼ばれる特定方向へ割れやすいという性質も持っており、柔らかく繊細です。
そのため加工が非常に難しく、アクセサリーやビーズなどに加工されているものは手に入りづらくなっている傾向にあります。 加工されたセレスタイトを手に入れる機会が減っているのは残念ですが、セレスタイトの最大の魅力は原石の状態で手にすることができるクラスターにあるとも言えます。
結晶が詰まったセレスタイトの原石クラスター

クラスターと言えばクリスタルクォーツやアメジストが人気がありますが、セレスタイトのクラスターもとても魅力的です。
長い年月をかけて生成された結晶が母岩にぎっしり詰まった様子は、自然そのものの壮大さも感じることができます。
透明感のあるブルーの結晶が集合し「力強さ」も感じる一方、キラキラと輝く美しさも兼ね備えています。セレスタイトのクラスターはインテリアとしてはもちろん、ベッドサイドストーンとして人気です。
寝室の片隅に置くことでセレスタイトの美しさを身近に感じられると共に、スピリチュアルな作用もあると言われています。
セレスタイトの主な産地はイタリアからマダガスカルへ

前述したように1781年にイタリアのシチリア島で発見されたセレスタイトですが、現在その島ではほとんど採掘されていません。既に枯渇状態にあると言われており、主要産地はマダガスカルやナミビア、またアメリカやメキシコなどに移っています。
ちなみに日本でもわずかに採掘された記録はあり、場所は島根県の鵜峠鉱山(うどこうざん)です。鵜峠鉱山は昭和45年に閉山されましたが、銅や石膏を採掘しており、明治時代の最盛期には約3,000人もの鉱夫が働いていたと言われています。
採掘された鉱物の中にセレスタイトが混ざっていたらしく、日本におけるセレスタイト発掘の希少な例です。
現在、上質なセレスタイトが発掘される場所として知られているのは、アフリカ大陸の巨大な島国であるマダガスカルになります。
マダガスカルの北西部にあるマハジャンガ州・南部のトゥリアラ州・中部アンタナナリボ州などで採れますが、特にマハジャンガ州にあるサコアニー村は質の良いセレスタイトが多く採掘される場所として有名です。
マダガスカルといえば地殻構造が複雑でサファイアやスフェーンをはじめ、さまざまな宝石を産み出す世界有数の宝石産出国として知られていますが、透明度の高い空色をした上質なセレスタイトもこの「宝島」で採掘されています。
セレスタイトの石言葉は「休息・浄化・心の解放」

花言葉のように多くの鉱物には石言葉が付けられていますが、セレスタイトにも石言葉があります。
セレスタイトの石言葉は「休息・浄化・心の解放」です。
先ほどセレスタイトはベッドサイドストーンとして人気があるとお伝えしましたが、これはこれらの石言葉にも関係しています。寝室にセレスタイトのクラスターを置くことで、質の良い眠りが得られて身体の休息と心を浄化できると言われています。
パワーストーン「セレスタイト」のヒーリング効果

パワーストーンとしても用いられることのあるセレスタイトですが、癒しを与えてくれるヒーリング効果があるそうです。
怒りなどのネガティブな感情を抑え、心を穏やかにしてくれると同時に、人を思いやる心を育む助けにもなると信じられています。
アクセサリーやジュエリーとして普段から身に付けることは難しいですが、部屋にクラスターを置くことで一緒に住むパートナーや家族との関係がより良くなることも期待できるでしょう。
セレスタイトが持つ意味
セレスタイトは、その名前の通り、天(Celestial)からのメッセージを運ぶ石と言われています。精神的な平和や内面の落ち着きをもたらすと言われており、心を穏やかにし、ストレスや不安を和らげる効果があるとされます。
セレスタイトの持つ意味としては、以下のようなものがあります。
・ストレス解消や穏やかな日常
・コミュニケーションの促進
・高次の意識との繋がり
・インスピレーションを高める
セレスタイトの取扱い方法とお手入れ

前述したように、セレスタイトは柔らかく傷ついたり破損したりしやすいですので、取扱いには注意する必要があります。美しい状態を長く維持するために硬度の高い天然石などと一緒に保管するのを避け、個別に保管するようにしましょう。
クラスター状のセレスタイトはホコリなどが表面に付くと、取り除くのが大変です。部屋に置く時などはディスプレイケースに入れるなどの対策をおすすめします。
また直射日光は劣化の原因になる恐れがありますので、できるだけの当たらない位置に置くようにしましょう。
最後に / セレスタイトの魅力

今回はセレスタイトについて解説しました。空の色を反映したような美しい色、また加熱すると鮮やかな紅色を見せる炎色反応など、セレスタイトには特徴的な魅力があります。
それらの美しさの他にも、柔らかく傷つきやすいという「もろさ」も特徴的ですが、それは可憐で儚い(はかない)とも言い換えられるでしょう。
美しく儚いものは人々を魅了します。このセレスタイトもその一つですが、ヒーリング効果をもたらしてくれる「優しい力」も兼ね備えています。たとえ外が大雨でも、部屋にセレスタイトを置くことで室内は晴れの日のような爽快感やポジティブな気持ちになれるかもしれません。
そんなセレスタイトに魅力を感じたら、ぜひ手にとって身近な存在にしてみてください。
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