
紫色の宝石として誰もが思い浮かぶのは、アメジストですね。最もポピュラーな天然石の一つであり、語り出したら話が尽きないほどの奥深さを持っているといっても過言ではないと思います。
高貴な気高い紫色は相反する妖艶さを持ち、その意外性に誰もがひれ伏してしまいたくなる宝石ではないでしょうか。今回は、そんなアメジストに魅せられていただきます。
アメジスト(紫水晶)について

アメジストは水晶の変種です。和名は「紫水晶」と言い、鉄分とアルミニウムを含むことから美しい紫色の色調の水晶です。紫色は日本においても珍重され、江戸時代の町人には看板に紫色を使用することを禁じた掟がありました。
そんな色を持つアメジストは、キリスト教においても司教が身につけ尊厳をあらわしていたと言われ「司教の石」と呼ばれていたそうです。気品に満ち冷酷なようで温かみもあり、肉体的にも精神的にも刺さる天然石です。
アメジストの色と特徴

アメジストの紫色は、薄いパープルや白っぽい灰色がかったもの、藍色からピンク色に近い紫色もあり、幅広いカラーグラデーションが存在します。また、色帯(カラーバンド)と呼ばれる濃淡の縞が見受けられ、神秘的な魅力を放っています。高品質なアメジストは色むらがなく、深い紫色だと言われていますが、形成途中に紫外線により淡い色合いとなったアメジストは、「ラベンダーアメジスト」と呼ばれ、優しく穏やかなお色目が人気です。
このようにアメジストは紫色が一般的ですが、緑色のアメジストが存在するのをご存知でしょうか?「グリーンアメジスト」は、宝石学上では「プラシオライト」と呼ばれ、アメジスト、シトリン、アメトリンの仲間でコレクターに人気の天然石です。こうしたアメジストの品質や色調は産地により異なってきます。
アメジスト、紫水晶の産出国
アメジストは、もともとルビーやエメラルド、サファイアのようにとても高価な石で、特権階級の人のみ手にすることができる大変貴重な宝石でした。
しかし19世紀にブラジルに大きな鉱山が発見され、希少石だったアメジストが豊富に産出されるようになったのです。今でも主要な原産国はブラジルで、他にアフリカのザンビアやウルグアイで産出されます。ブラジルで産出されるアメジストの特徴は、比較的明るい紫色です。ザンビア産のアメジストは、色が濃く鮮やかなのが特徴です。歴史が古いロシア産は、深い紫色で青や赤の光を放つ物もあります。
ラベンダーアメジストは主にブラジルやマダガスカルで産出されますが、特に透明度が高く高品質なラベンダーアメジストは、マダガスカルで多く産出されます。 グリーンアメジストは希少ながら、ブラジルで産出されています。
アメジストは異端の神バッカスの石

ギリシャ神話に出てくる、荒くれ者の酒の神「バッカス」は、月の女神「ディアナ」と喧嘩をしてしまいます。侮辱を受けたと逆恨みしたバッカスは、憂さ晴らしにたらふくお酒を呑んで家来達と騒いでいました。
それでもバッカスの怒りは収まらず、今からこの道を歩いてくる最初に出会った人をペットである猛獣ピューマに襲わせてやる、といったとんでもない悪行を企みました。「面白いことになりそうだウハハハハ。」と外に出てバッカスは獲物を待ち構えていました。
そこへ、運悪く通りかかったのが偶然にもバッカスが侮辱を受けたと逆恨みしている月の女神「ディアナ」に仕える女官「アメジスト」でした。猛獣が美しい少女アメジストに襲いかかろうとしたその時です、月の女神ディアナがそれを察知し、アメジストを一瞬の内にクリスタルに変えたのです。
はっと我に返ったバッカスは猛省し、自分が持っていた高価なワインをクリスタルになってしまったアメジストにドボドボとふりかけました。「もう二度とお酒に悪酔いいたしません・・・。」と祈りを捧げ、深く誓い供養したのです。するとクリスタルは見事な紫色にそまり、美しく輝くアメジストの原石ができたというお話が伝えられています。
ギリシャ語の「amethystos」は「お酒に酔わない」という意味を持つことから、諸説ありますが、この神話がアメジストの名前の由来であると言われています。
アメジスト、紫水晶のパワーストーンとしての効果について

アメジストは、動の赤色と静の青色が混ざり合った色です。高貴さの中に潜む妖艶な魅力が見え隠れする二面性を持つ美しい色です。気高い品格の中に潜んでいる官能的な艶とでも言いましょうか。
身につけただけで、ワンランク上の自分へと導かれたような気持ちになるけれど、調子に乗っていい気になっていたら、どん底に突き落とされるかの如く強いパワーを感じるのは単なる錯覚でしょうか?そんな意外性こそがアメジストの大きな魅力の一つでもあるのです。ゾクゾクするような二面性の魔力を持つ、アメジストの不思議な世界を感じていただきたいです。
アメジストの石言葉
アメジスト、紫水晶の石言葉は、「誠実」「心の平和」です。上質なアメジストは権力の象徴ともされ王家の王冠に埋め込まれ、代々受け継がれてきました。
旧約聖書にも登場し、古くから気高い石とされ宗教的な儀式などにも用いられ、誠実、平和の象徴として崇められてきました。 気品に満ちた輝きは、愛と真実、受難と希望をとなえ、心にくもりを抱える人には慈悲のパワーを、罪深き人には悔い改めのパワーをもたらす石として大切に扱われてきました。

アメジストの効果
前述した酒神「バッカスの」神話から、アメジストを身につけると、お酒に酔わないと言われています。酒宴を伴う接待や、歓送迎会やパーティなど、悪酔いしやすい人、酒癖が悪いとわかっている方は、是非身につけていただきたいです。また、お酒を伴う接客業に従事する方には必需品です。注意深く見てみると、薄明かりの下に輝くブレスレットやリングなどをさりげなくお洒落に身につけていらっしゃいますよ。きっと自分自身のお守りとして心得ているのだと思います。
また、アメジストは官能的な石とも言われ、意中の人を招き寄せるパワーがあるのだとか。 もし片思いの人がいたら、アメジストをプレゼントしてみましょう。お酒には酔わせないけれど、そんなあなたに酔いしれてしまうかもしれません・・・。
ただし、アメジストは光に弱いので直射日光に長い時間あててはいけません。保管には十分注意が必要です。燃え上がるのもほどほどにしておいてくださいね・・・。
アメジスト(紫水晶)の持つ意味

かつて遠い地で、人々はアメジストの石に特別な力が宿ると信じていました。その深い紫色は、夜空の星々のように神秘的で、心に平和と静けさをもたらすとされていたのです。
平和
アメジストの物語は、まず平和の力から始まります。この石は、持ち主に心の安らぎを与え、穏やかな気持ちを育むと言われています。波立つ心を静め、穏やかな海のような平和な状態へと導く力があると、古の人々は信じていました。
自己理解
次に、アメジストは自己理解の旅へと誘います。この石は、持ち主の内面に光を当て、自己の本質や真実を明らかにするとされています。深い自己洞察を促し、自分自身との対話を深めることで、真の自己を理解するための鍵となるのです。
浄化
そして最後に、アメジストは浄化の力を持っています。この石は、心と精神を浄化し、ネガティブなエネルギーを払いのけるとされています。まるで清らかな泉のように、心を洗い流し、新たな始まりのための準備を整えるのです。
アメジストが放つ紫色は、ただの色ではなく、心を癒し、精神を成長させ、新たな道へと導く深い意味を秘めたメッセージなのです。
アメジスト(紫水晶)を使用したアクセサリー

アメジストは様々な形状にカッティングできることから、世界的に有名な宝飾ブランドのリングやネックレスなどにも使用され、ラグジュアリーな宝飾品として世界中に流通されています。ハンドメイド用のビーズの種類も豊富です。丸玉はもちろんですが、よりグレードアップしたミラーボールカットや、オーバル型、ボタンカット型、ドロップ型などもあるので、様々なデザインが浮かんで来ると思います。品位と優雅さ、美しい輝きを持ちながらお値段はお手頃なので、ジュエリー作家さんにとって一番レパートリーが広がる石なのではないでしょうか。
同色一連のブレスレットも良いですが、薄色のラベンダーアメジストとのコンビで繋げていくのもしっくりくると思います。カボションカットのアメジストを台座に貼り付けた、ペンダントトップやリングもお勧めです。アメジストは男女ともにプレゼントし合うと良い石とされています。アメジストを使用した世界に一つだけのハンドメイドアクセサリーを贈ってみてください。
昔は、限られた人にしか許されなかったアメジストが、こうして誰もが身につけることができるなんてブラジル鉱山に感謝ですね。「豊富に産出してくれてありがとう」地球の裏側に向かって手を合わせたくなる今日この頃です。
アメジストのモース硬度

アメジストのモース硬度は7という数値を持っており、十分な硬さがあるとされています。日常的に身につけるのにも安心な硬度ですので、アクセサリーとしての使用にぴったりです。
取り扱い上の注意とメンテナンス方法
- 定期的な洗浄:アメジストは、ぬるま湯や石鹸水と柔らかい布を使って優しく洗うことができます。定期的にキレイにしてあげることで、アメジストの輝きを長続きさせることができます。
- 化学物質を避ける:化学物質や強い洗剤は、アメジストの輝きを損なう可能性があります。自然の美しさを損なわないよう注意しましょう。
- 硬い物体との接触を避ける:硬度が高いとはいえ、傷つく可能性はあるため、他の宝石や硬い物質との接触は避けたほうが安心です。
- 安全な保管:そして、使用していない時は柔らかい布やジュエリー用の袋に包み、安全な場所に保管しましょう。
適切なケアと愛情をもって扱われることで、アメジストは時間を超えて多くの心を癒し、魅了し続けることでしょう。
アメジストのまとめ
アメジストは、サンバの国ブラジルの情熱的な熱いリズムとはほど遠く、北半球においては冷たく厳しい冬の2月の誕生石です。まるで燃え上がる恋の炎を一気に冷ますかの如く、アメジストの紫は高貴に冷酷に輝くのです。
夢中になるのも良いけれど、我を忘れるくらいにのめり込んではいけません。どこかに冷静な部分と計算高い策略も必要です。さもないと思わぬ火傷を負うこともあるのです。お酒も恋も同じです。悪酔いは禁物です・・・。
アメジストを身につけて、冷静に気高く美しく、時にはよろめきも添えて・・・、人生を謳歌いたしましょう。
アメジスト、紫水晶の鉱物データ
英名 | Amethyst |
和名 | 紫水晶・石英(むらさきすいしょう) |
分類 | ケイ酸塩鉱物 |
化学式 | SiO2 |
色 | 紫色 |
モース硬度 | 7 |
劈開性 | - |
屈折率 | 1.54-1.55 |
結晶系 | 三方晶系 |
断口 | 貝殻状-凹凸状 |
条痕 | 白色 |
比重 | 2.65 |
光沢 | ガラス状光沢 |
石言葉 | 誠実、恋愛成就 |
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