宝石の女王として、また、世界四大宝石の一つとして名高いルビー。ダイヤモンドと同じくらい有名な宝石ではないでしょうか。その知名度は本や曲など作品のタイトルになるくらい高く、赤い宝石と言ったらルビーを思い浮かべることも多いと思います。
ルビーの成り立ちや歴史に詳しい方もそうでない方も、もっとルビーに心を惹かれるような魅力をお届けしていきます。
ルビーの鉱物データ
英名 | Ruby |
鉱物名 | コランダム |
和名 | 紅玉 こうぎょく |
化学式 | Al2O3 |
色 | 赤 |
モース硬度 | 9 |
劈開性 | なし |
屈折率 | 1.760-1.779 |
偏光 | 複屈折性 0.008-0.009 |
比重 | 3.99-4.05 |
誕生石 | 7月 |
主な産地 | ミャンマー、ベトナム、カンボジア、 タイ、スリランカ、マダガスカルなど |
石言葉 | 情熱・純愛・勇気 |
ルビーの特徴
ルビーは鉱物としてはコランダムという種類に属します。これは同じ四大宝石のサファイアと同じ鉱物になります。コランダムはもともと無色ですが、結晶に組み込まれる元素によってその色が変わります。クロムが入ることで赤色、すなわちルビーになります。チタンや鉄が入ることで青色やその他の色、すなわちサファイアになります。
ここで注目する点は、赤色のものだけをルビーと呼んで、それ以外の色をサファイアと呼ぶことです。
ルビーの色の範囲はオレンジがかったレッドからややパープルがかったレッドまで微妙な範囲があります。これらをルビーと呼べますが、あくまでも赤が主要色(地色)ということが大切です。この範囲から外れたものはすべてサファイアと呼ばれます。
サファイアは最も有名なブルーサファイアのほかにもいわゆるファンシーカラーサファイアと呼ばれる、オレンジ、ピンク、グリーンなどがありますね。
四大宝石のうち2つが実は同じ鉱物だったということを初めて知った時、自然界の神秘に感動しつつも、古来から多くの人に愛されて高い価値を見出されてきた理由はそこにもあったのかと非常に納得した記憶があります。
硬度はモース硬度でいうと9となり、とても硬い部類に入ります。ダイヤモンドに次いで硬いと言われており、加工する際の耐久性が高いことも優れた価値として評価されています。美しく強い、と言うとシンプルな表現ですが、その美しさを保ったままより美しくなれる加工をほどこされるポテンシャルを持っていると思うと、やはり特別な宝石であることは間違いありません。
現在、一般的に流通しているルビーのほとんどに加熱処理がほどこされています。しかし、加熱処理されているからと言って価値に影響はありません。むしろ加熱することで色味とそのバランスをより美しく整え、透明感を出すなどの効果が得られます。
もっと言うと、本来そのルビーが持っている美しい色や透明感を引き出すために行われています。ルビーの一番の価値を挙げてと言われたら、それはやはり色にあります。
加熱処理されているかどうかに関わらず、色が美しいものの方が価値が高いのです。つまり、色の美しさが同じならば非加熱のルビーの方が高価ですが、より美しい色をしているのが加熱済の場合、そちらの方が高価ということです。加熱処理はルビーの価値を損なうものではないのです。
ルビーの名前の由来、和名
ルビーの語源には諸説ありますが、「赤」を意味するラテン語の「ルベウス(rubeus)」から来ているという説が有力です。非常にシンプルな由来ですが、ルビーが古い歴史を持つことがうかがえます。
ユニークネームは単純に使われていない順につけていくことが一般的で、赤い石が産出された最初の頃に名付けられたのではないかと考えられます。見たままの赤色をそのまま宝石名にするなんて、名付けの方法としてまず初めに採用しそうなやり方ですものね。
しかし赤い色の宝石はいくつもあり、鉱物学が発達する以前はさまざまな赤い石がルビーと混同されていました。レッドスピネルやガーネットなどが有名です。古い書物にルビーと記載されていたものが実は異なる宝石だったのではないかとはよく言われますが、現物がないものに関しては何とも言えません。
レッドスピネルやガーネットにもルビーが持たないそれぞれの個性と魅力がありますので比べることはできませんが、古代から、赤い石の中でもより美しく強いものはやはりルビーだという認識があったのではないのかなと想像します。
現代と同じように、古代の人々も赤い石の中にそれぞれの個性を見出していたはずですし、それはきっとルビーとガーネットの違いだったかもしれません。
同じ名前で呼ばれていたとしても、その個性の違いを伝えてくれる宝石はやはりとても深い魅力があると感じます。
和名は「紅玉(こうぎょく)」といい、これも見た目の色味から名付けられています。ちなみにサファイアの和名は「青玉(せいぎょく)」といい、まるでルビーと対をなすような名称です。同じコランダム鉱物というつながりをまた思い出しますね。
ルビーの主な産地
ミャンマーは世界屈指のルビー産地として有名です。
その他に、ベトナム、カンボジア、タイ、スリランカ、マダガスカルなどがあります。
また近年、タンザニアとモザンビークから高品質なルビーが発見されて、21世紀における世界最大規模鉱山が誕生しました。ミャンマー産ルビーとはまた異なる個性を持ったルビーとして登場以来注目を集めています。
ルビーのような歴史ある宝石にも、現代まで出会ってこなかった個体がまだまだあると思うと、それだけで気持ちが高揚してきます。
ルビーのカラー
ピジョンブラッド
ルビーのカラーには色々な呼び方があります。中でも有名なものが「ピジョンブラッド(鳩の血)」と呼ばれる赤色です。この名称は、強い蛍光を持ち、彩度と純度が高いビビットな赤色のルビーに使われます。
この呼び名は、1348年にアラビアの宝石商が銀板の上に落とした新鮮なハトの血の色のようだと表現したことが語源とされています。
元々はミャンマーのモゴック地方で採れる中でも最高品質のルビーがこの色をしており、ピジョンブラッドとは、ミャンマーのモゴック産のものだけを指していました。
現在は産地に関わらず、規定の範囲の色味に入るものはピジョンブラッドと呼んでいいそうです。 内部からの輝きが強く、鮮やかなテリを持つ美しいレッドカラーのピジョンブラッドルビー。とても稀少で高価ですが、ルビー愛好家としてはいつか手にしてみたい逸品です。
ビーフブラッド
牛の血のような色、という意味で、やや黒みを帯びた深い赤色を指します。タイで産出されるルビーによく見られる色味で、落ち着いた印象が特徴です。若干パープルがかってみえることもある神秘的な大人のカラーです。
チェリーピンク
ピンクのニュアンスが大きいライトレッドで、透明感が高く明るい発色が特徴です。スリランカで産出されるルビーに多く見られます。一般的に連想されるルビーの色味よりはとても明るいので、これがルビー?と思う方もいるかもしれません。
でもその魅力は手にすると包み込まれるような明るい輝きからも感じられて、いつもとは違うルビーを楽しみたいときにはぴったりです。
スカーレットレッド、クリムゾンレッド
タンザニアとモザンビークの新産地から産出されたルビーにつけられた新しい呼び名です。
炎のような明るい赤色のトーンに、わずかなオレンジや黄色をまとったルビーをスカーレットレッドと呼び、青みがかった濃く明るい赤色で彩度の高いルビーをクリムゾンレッドと呼ぶそうです。
どちらも非常に美しい色調で、ピジョンブラッドと呼べるかもしれないと当初話題になりましたが、太陽のもとではピジョンブラッドよりもほんの少し暗く見えることからそれぞれ別な呼び名がつけられました。
ピジョンブラッドとは呼べないけれども、ただのルビーレッドとしてしまうのはあまりにも惜しいくらいの美しさということなのですね。新興産地から新しいカラーネームが誕生したことも、これからもっと沢山の種類の美しいルビーに出会える可能性を感じさせてくれます。
ルビーの種類
スタールビー
丸くカボションカットしたルビーに光を当てた際に、6条の光が浮き出るものをスタールビーといいます。
本来の宝石の美しさとは、その色味と、高いほど良しとされる透明感ですが、しばしば例外が現れます。その代表がこちらのスタールビーで、類まれなる魅力を備えています。
この6条の光の出現はスター効果と呼ばれるもので、アステリズム効果や星彩効果と呼ばれることもあります。
これは、ルビーの内部にある針状のインクルージョン(ルチルシルク)の作用によるものです。インクルージョン=内包物は一般的には宝石の美しさを損なうものとして評価されないものですが、スター効果に関しては、このルチルシルクがあることで光が屈折して6条の光を放っているのです。
ですが、ただルチルシルクがあるだけでは美しくきらめきません。適度な量が含有されていることと、効果的な配列になっていることで初めて美しいスター効果が表面に現れます。
ルビーのように透明度が高い宝石はカットをほどこしてきれいに輝かせることが常であり、また、内包物があるほど美しい宝石になれないことのほうが多いです。しかしながらその自然の奇跡とも言えるスター効果を、丸く磨くことで引き出しながら、さらに価値のある宝石にした職人たちの技と知識には拍手を送りたいですね。
石を傾けたり光をかざすことで6条のラインも一緒に動いて見える様子はなんだかとても愛おしいです。スタールビーは、宝石の女王であるルビーをよりいっそう華やかに彩る特別なルビーです。
人工ルビー(合成ルビー)
人工ルビー(合成ルビー)とは、人工的にルビーの結晶構造を生成したものです。
合成石の中で1番最初に作られたという古い歴史を持ち、それはつまり宝石の中でも古くから需要のある合成石だということを意味しています。安価で手に入りやすいという長所があり、あふれる透明感と目の覚めるような鮮やかなレッドカラーが人気な点です。
天然のルビーが安定して産出されるようになった今もなお人工ルビー(合成ルビー)が求められていることは、それだけルビーが古来から支持されている宝石だということを示しています。
ルビーの歴史・言い伝え
古くに発見されてずっと愛され続けてきたルビーにはそれにまつわる言い伝えや伝承が数多く残されています。
その中でも最も古いものの一つに、旧約聖書の記述があります。
「叡智はルビーよりも尊く、あなた方が欲するどのようなものとも比べて勝るものはない」
「誰が賢い妻を見つけることができるだろうか、彼女はルビーよりも尊く優れている」
叡智や賢妻はあの素晴らしいルビーよりも尊いものだという文脈ですが、このことからも古くからルビーとは最上の宝石という位置づけをされていたことが分かります。他にも、古代ヨーロッパでは、スタールビーをその6条の光から「3つの剣」と呼び、邪気を追い払う魔除けの役割をしていたと言われています。
これと同じような、ルビーを退魔や幸福のお守りとして奉っていた言い伝えはたくさんあります。有名産地であるミャンマーではその昔、ルビーを体に取り込むとその力を最大限引き出すことができて、戦いに敗れないと信じられてきました。ルビーがその美しさと強さから特別に愛されてきた歴史を感じることができます。
ルビーは7月の誕生石
ルビーは7月の誕生石としても非常に有名です。その石言葉に込められた意味からも贈り物としてふさわしい宝石です。
ルビーは持ち主の生命力を高めてくれるパワーストーンとしての効果があり、ここから発展して、生命力が高まり活動的になることとは、内面のポジティブなエネルギーからそれが行動につながり、結果的に外面の健やかさや美しさにつながるとされています。
そこから、持ち主の魅力や美しさを引き出す宝石という意味合いでもとても人気があるのです。誕生石でなくとも持っていたくなる効果を持つ宝石ですね。
ルビーのパワーストーンとしての効果と浄化方法
ルビーのよく知られる効果
ルビーの石言葉には、情熱、勝利、勇気などがあります。情熱の石、なんて言われることが多く、きっと耳にしたことがありますよね。このレッドカラーから連想されて情熱の石と呼ぶと思われることも多いですが、実はルビーの持つ効果に由来しています。
先ほど紹介しましたが、ルビーのパワーストーンの効果として大きなものに、生命力を高めて、人生の充実度もアップしてくれるというものがあります。持ち主の生命力を高めてより力強く人生を歩めることから、すなわち魔除けになると考えられてきました。同じように、生存力を高めてネガティブな事柄を退けるという役割から、先ほどのルビーの石言葉が生まれたと思われます。
またルビーはグラウディングにも有効な宝石だとされています。
グラウディングとは、精神の中心と地球を結びつけ、そのつながりを鍛えて心と身体のバランスを安定して良い状態へ引き上げてくれることです。そのサポートをしてくれる宝石はいくつかあり、モリオンやオニキスなどブラックカラーの宝石が多いですが、ルビーにもその力があります。
黒い宝石はグラウディングのしっかりとした土台になってくれます。ルビーも土台になることができますが、それだけでなく、さらにそこから力強く前に進むパワーにあふれていると言われています。
テクノロジーの進化により世の中の変化が急激に加速している現代で、漠然とした将来の不安を抱えている方は多いと思います。なぜだか分からないけど不安で心が落ち着かない、そんなときにルビーが持つ力、エネルギーを与えてくれて生命力をアップさせる効果がぴったりです。
それ以外にも、日々のストレスや疲れを感じたときや、なんとなく元気が出ないときにも活力を呼び覚ましてくれます。 古代から現代まで人間の悩みはさまざまですが、ルビーはその圧倒的にポジティブな効果でもって、わたしたちを支えて勇気づけてきてくれたことが分かります。
ルビーの浄化方法
ルビーは高い硬度を誇る宝石なので、そこまで繊細に取り扱わなくても心配いりません。
ただ変色する場合もあるため、日光での浄化は避けたほうが良いでしょう。そのほかの浄化方法であれば基本的にどれも問題ありません。パワーがたっぷりの頼もしい宝石ですが、いつも以上に絶好調に過ごせたときなどは丁寧に浄化をしてパワーチャージしてあげましょう。
ルビーのアイテム一覧
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