
光の当たり方などによって、カラーを変えたり美しい模様を見せてくれたりする宝石は数多くあります。
しかしアレキサンドライトほど、その見た目を変える宝石は珍しいでしょう。
「昼のエメラルド、夜のルビー」とも呼ばれるアレキサンドライトは、あたる光の種類によって、緑と赤という正反対のカラーを見せてくれます。
この記事では、二面性を見せるアレキサンドライトにスポットを当て、その組成や名前の由来、石言葉やその効果などについて紹介します。
アレキサンドライトの鉱物データ

英名 | Alexandrite |
和名 | 金緑石(きんりょくせき) |
分類 | 酸化鉱物 |
化学式 | Al2BeO4 または BeAl2O4 |
化学組成 | ベリリウムとアルミニウムの酸化鉱物 |
結晶系 | 直方晶系(斜方晶系) |
モース硬度 | 8.5 |
靭性 | 高 |
比重 | 3.7-3.8 |
屈折率 | 1.74-1.77 |
分散度 | 0.015 |
劈開性 | 不明瞭 |
光沢 | ガラス光沢 |
色 | グリーンブルー、ダークグリーン⇔レッド、バイオレット |
石言葉 | 高貴、情熱、秘めた想い |
アレキサンドライトとは

アレキサンドライトは、ベリリウムとアルミニウムで組成されたクリソベリルという鉱物のひとつです。
クリソベリルのカラーが黄~黄緑色のものが多いのに対し、アレキサンドライトがグリーンやレッド系にカラーチェンジして見えるのは、酸化クロム、酸化鉄、酸化バナジウムを微量に含んでいるためです。
クリソベリルと同様、アレキサンドライトのモース硬度は8.5と、ダイヤモンド、ルビーなどに続く硬さを持っています。
扱いやすくデイリーユースのアクセサリーなどにぴったりですが、天然のアレキサンドライトは、内包物が多くまたクラック(ひびや割れ)が多いのも特徴のひとつ。もともとアレキサンドライトは見つかることが少ないことで知られる石ですが、大きな結晶が見つかることがまれで、5カラット以上ある天然のアレキサンドライトは大変希少となっています。
アレキサンドライト効果
宝石のなかには、アメジストやガーネット、サファイアのようにカラーチェンジするものも多くあります。
しかし、アレキサンドライトほど、大きくカラーチェンジする宝石は珍しいのです。
そのため、宝石が当たる光によってカラーを変える効果を「アレキサンドライト効果」と呼ぶこともあります。
それほどアレキサンドライトは、はっきりとしたカラーチェンジで見た目を楽しませてくれる宝石といえるでしょう。
アレキサンドライト キャッツアイ

クリソベリルは内包物の効果により、石のなかに猫の目のようなラインを見せるものがあり「クリソベリルキャッツアイ」と呼びます。
クリソベリルの亜種であるアレキサンドライトにもキャッツアイ効果がみられるものがあって「アレキサンドライトキャッツアイ」と呼ばれています。 希少なアレキサンドライトのなかでさらに希少なアレキサンドライトキャッツアイの実物と出会える機会は高額の宝くじに当たるよりも少ないかもしれないですね。

ロシア皇帝の名前に由来

アレキサンドライトが見つかったのは、1830年ロシアにあるエメラルド鉱山からでした。
見つかった当初は、グリーンの結晶体であったことからエメラルドだと思われていました。
しかし、その石が夜間になってろうそくやランプなどの光が当たるとレッド系の色にカラーチェンジしていたことから、エメラルドとは別の珍しい石であると認識され、ロシア皇帝に献上されることになります。
一説によると、皇帝に献上された日は、ロシア皇太子(のちの第12代ロシア皇帝アレクサンドル2世)の成年式であったことから、その名を取って「アレキサンドライト」と命名されたといわれています。
当時のロシアの軍服が緑と赤をカラーテーマとしていたため、ロシア国内で大変な話題になったともいわれています。
アレキサンドライトの産地

ロシアのウラル山脈、ブラジル、スリランカ、ジンバブエ、タンザニア、マダガスカル、インドなど、多くの国や地域で採掘されています。
しかし、内包物やクラックなどが多いため、宝石質のものが見つかることはまれです。
その中でもロシアの鉱山では、質の高いアレキサンドライトが発掘されていました。しかしロシアの鉱山ではアレキサンドライトはほぼ枯渇したとみられているため、今後ますますアレキサンドライトの希少性が高まると考えられています。
日本では、残念ながらアレキサンドライトが発掘されたというデータが見つかりませんでした。
人工アレキサンドライト

アレキサンドライトは、その希少性からパライバトルマリン、パパラチアサファイヤと並び、「世界三大希少石」とよばれるほど珍しい石です。
場合によってはダイヤモンド、サファイア、エメラルド、ルビーの「四大宝石」よりも価値が高いといわれることがあるほど。
そんなアレキサンドライトですが、1975年に人工合成に成功しています。
開発者の努力により、化学特性・物理特性・光学特性・結晶構造が天然のものと同質の人工アレキサンドライトが作られるほどになりました。
人工アレキサンドライトには、内包物やクラックもほとんどなく、天然ものに比べると安価で大きな結晶を作ることができるメリットがあります。
リーズナブルで、粒の大きさや形がそろっている人工アレキサンドライトは、ジュエリーとしても加工しやすいでしょう。
また現在、レーザー機器の部品にも人工アレキサンドライトが使用されています。 今後ますます人工アレキサンドライトが活躍する場が増えてくるかもしれません。
6月の誕生石、63年ぶりの大改訂

アレキサンドライトは、GIA(米国宝石学会)では6月の誕生石と認定されていましたが、日本では、誕生石として認められていませんでした。
2021年12月に、全国宝石卸商協同組合が誕生石の改定を提案し、日本ジュエリー協会、山梨県水晶宝飾協同組合も賛同したことから、6月の誕生石として、アレキサンドライトが追加されることになりました。
現在6月の誕生石は、パール(真珠)、ムーンストーン、アレキサンドライトの3つになります。 また、アレキサンドライトは、結婚45周年の金緑婚式の宝石でもあります。

アレキサンドライトの石言葉・意味・効果
ここからは、パワーストーンとしてのアレキサンドライトについてみていきましょう。
アレキサンドライトの石言葉
アレキサンドライトの石言葉は、秘めた思いです。
この石言葉には、周囲からの影響を受けず、自分の信念に基づいて突き進む意志の強さを持つ、という意味と、アレキサンドライトのもつ二面性のように、表に出ている性質とは別の隠された魅力を持っているという意味があります。
癒し系に見えて、実はしっかりと自分の意思を持っていることに気づいたとき、周囲の人は、そのギャップに魅了されるでしょう。
または自分自身も気づいていなかった個性を引き出すことができるかもしれません。
このほか、高貴・栄光・誕生・出発といった石言葉も、アレキサンドライトは持っています。
アレキサンドライトの効果

アレキサンドライトには次のような効果があるといわれています。
- 周囲に流されずに自分を貫く強さと柔軟さ
- 自分を大事にする力を与えてくれる
- 内に秘めた個性を引き出し、創造力を発揮させてくれる
自分に自信がない人や、自分の意見をはっきり言いたいと願っている人にぴったりの石です。これから転職や引っ越しなどで環境が変わる人へのプレゼントとしてもおすすめです。
アレキサンドライトのお手入れ・浄化方法

アレキサンドライトは、モース硬度8.5と、ダイヤモンドやルビー、サファイアに次ぐ硬さを持つ石です。
そのため、扱いやすくデイリーユースのアクセサリーの宝石にもぴったりです。
お手入れは汚れが気になった場合に、中性洗剤を薄めたもので洗った後、しっかりと水気を切れるだけでOKです。
浄化も、日光浴・月光浴・塩・クラスタ・セージ・音浴のいずれの方法でも浄化できます。
ただし、いくつかの石がついているアクセサリーなどは、そちらの石に適した浄化方法を選び浄化することをおすすめします。
まとめ

「昼のエメラルド、夜のルビー」と称されるほど、当たる光によって別の石かと思うほどがらりと表情を変えるアレキサンドライトは、これまで希少価値の高い石として知られていました。
良質のアレキサンドライトが採れるロシアの鉱山も枯渇したとみられているため今後ますます天然のアレキサンドライトは希少なものとなるでしょう。
しかし一方で、人工宝石の技術が高まり、天然のアレキサンドライトと同質の人工アレキサンドライトも作られるようになりました。
粒がそろった人工アレキサンドライトは、ピアスなどの対になるアクセサリーへの加工もしやすく今後ますます増えてくるとみられています。
隠れた才能を引き出すとされているアレキサンドライトを見かけたらぜひ手に入れてみてはいかがでしょうか。
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